2024年11月27日水曜日

西洋中世学会編『西洋中世文化事典』

 西洋中世学会編
『西洋中世文化事典』
丸善出版、2024年12月

【内容紹介】
5〜15世紀頃のヨーロッパ世界を指す“西洋中世”。
いまだ「暗黒時代」と称されることも多いが、幅広い研究分野において語られることが多く、創作物でも受容されるなど、後世にも影響を与え続けている時代である。
本事典では歴史、商業、衣食住、信仰、文学、美術、建築、哲学、ジェンダー研究、さらには後世での受容までも含め解説し、学際的な構成とした。
また、対象範囲は「ヨーロッパ」の範囲を西欧に限らず、北欧や東欧、中欧、さらには十字軍国家が建設された中東、イスラーム圏までに広げ、周辺海域やアフロ・ユーラシア世界も視野に収める地域横断的な内容を目指した。

目次は丸善出版のウェブサイトにて
https://www.maruzen-publishing.co.jp/item/b306139.html




2024年11月14日木曜日

Ram Ben-Shalom教授講演会

ラム・ベン・シャローム先生講演会

中世西欧ユダヤ史がご専門のラム・ベン・シャローム先生(ヘブライ大学教授)のご講演のご案内です。
中世後期スペインにおけるユダヤ人の強制改宗をテーマとする講演となります。

日時:2024年11月30日(土)14:30-17:30
場所:東京大学本郷キャンパス法文1号館217教室

講演者:Dr. Ram Ben-Shalom 
(Professor of the History of the Jewish People and Director of the Center Hispania Judaica in the Hebrew University)

題目:
"The Way to the 'Third Way' of Conversion: Reconsidering the Waves of Jewish Conversions to Christianity in 15th-Century Spain"

講演は英語でおこなわれます。

1時間ほどの講演の後、志田雅宏(東京大学講師)によるコメント、およびフロアのみなさまとの質疑応答をおこないます。

対面のみでの実施となります。

連絡先:
志田雅宏(東京大学講師)
masahiroshida222(アットマーク)gmail.com

主催:
科学研究費助成事業(若手研究)「中世西欧キリスト教世界のユダヤ教文献にみられる宗教観についての研究」(23K12019、研究代表者:志田雅宏)



2024年10月6日日曜日

日本ユダヤ学会第21回学術大会

日本ユダヤ学会第21回学術大会

日時:2024年10月26日(土) 10:25~17:30 
場所:東京大学本郷キャンパス法文1号館113教室
〒113-0033 東京都文京区本郷7丁目3−1

ハイブリッド形式での開催
詳細は日本ユダヤ学会ホームページにて
https://jewishstudiesjp.org/2024/09/29/conference2024/

プログラム

10:25 開会のあいさつ

10:30~11:15 嶋田英晴(同志社大学)

ユダヤの商業ネットワークと『ラシュート(管轄)』の関わり~ブンダール家の事例から~

ゲニザ文書の書簡と先行研究から、12世紀前半の地中海とインド洋で活動するユダヤ商人達とネットワークを有していた、アデンを拠点とした豪商ブンダール家を中心に、バビロニアのレシュ・ガルータ(捕囚民の長)、エジプトにおけるパレスチナ系イェシヴァのガオン、そしてエジプトのナギッド(ユダヤの長)との関りを明らかにする。これによりユダヤの商業ネットワークとラシュートの関わりについて具体的に解明する。

(※研究発表は発表30分+質疑応答15分。以下同)


11:20~12:05 蓼沼理絵子

R.Bahyaの「食卓」-パンの祝福と世界の秩序

サラゴサのR.Bahya ben Asher(1255-1340)の『シュルハン・シェル・アルバ(四脚の食卓)』は、その名のとおり「食」から道徳と倫理を説く。荒れ野に降ったマナや過越し祭のマツァを含め、パンはすべての食事と生活の基本であり、卓上の食事と作法は世界の秩序を表す。ゆえに、定められた食事は正しい知識の摂取であり、救済の約束につながる。このパンの祝福と表象から、R.Bahyaの説く「食卓」とその世界観を考察する。

12:05~13:30 休憩

13:30~14:15 大澤耕史(中京大学)

ヘブライ語聖書から新約聖書までの呼称とその実体:「ユダヤ人」とその周辺

ヘブライ語聖書の中で「ユダヤ人」を示す言葉は複数存在する(ユダヤ人、ヘブライ人、イスラエルの民等)。本報告ではそれらの呼称と実体を踏まえた上で、聖書外典偽典を経て新約聖書に至るまでの間に、それらの呼称と実体がどのように変化したかを明らかにすることを試みる。特に、話者/著者がキリスト教徒に変わるに際し、神との契約の正統性をめぐる争いの中での変遷に着目したい。


14:20~15:05 李美奈(東京大学大学院)

17世紀理性主義者に対する反駁に見る、モデナの儀礼と法に関する思想

発表者はレオネ・モデナ(1571-1648)『ヘブライ人の儀礼の歴史』(1638)の歴史的な影響力を鑑み、モデナのユダヤ法や儀礼に関する思想を研究している。本発表ではハンブルクのウリエル・ダ・コスタがヴェネツィアのラビに当てた質問状に対するモデナのレスポンサ『盾と大楯』(1616)を用いて、口伝トーラーや戒律の実践に関するダ・コスタとモデナの見解の違いを分析し、モデナのユダヤ法に対する思想を明らかにすることを試みる。


15:10~15:55 加藤哲平(九州大学)

ラビ・オカモト:日本人最初のラビの生涯と思想

本発表は、ラビ・オカモトこと岡本宏(おかもと・ひろし、1926-1981)の生涯と思想を、現存する資料から明らかにするものである。岡本は、戦時中は帝国海軍兵学校にて訓練を受けた軍人であったが、戦後日本の思想的混乱に抗するかのように、永遠の真理をユダヤ教に求めた。米国ヒブル・ユニオン・カレッジにてラビの資格を取得した岡本は、ラビとしての活動の傍ら、英国および米国で、タルグムの研究や比較宗教の教育にも従事した。本発表は、この「日本人最初のラビ」に関する最初の報告である。


15:55~16:15 休憩


16:15~17:30 講演:Jonathan Meir(Ben Gurion University of the Negev)

Historiography, Hasidism, and Forgery: The Case of the Kherson Geniza (On the Historiography of Habad and the Early Hasidic Movement)

In 1918, with the end of the First World War, rumours spread that a huge collection of original writings by the founder of Hasidism, Israel Baal Shem Tov, his disciples, and their followers had been discovered in Kherson. This was major news, as very few known texts by him exist—only a few letters. What prevents modern scholars from uncovering the mystery of these texts’ authenticity? Why are Hasidim still not ready to present these documents to the wider public? What is the significance of these letters in the history of Hasidism?

The lecture aims to highlight the uniqueness of Habad historiography as a case study of historical document forgery, the reinforcement of internal Hasidic consciousness, and the attempts to create a Hasidic modern literary channel in response to the secular neo-Hasidic literature of the early 20th century.

(※本講演はヘブライ語でおこなわれます。英文要旨が付きます)


講演者紹介

Jonatan Meir is a full Professor in the Goldstein-Goren Department of Jewish Thought at Ben-Gurion University of the Negev, and a Member of the Israel Academy of Sciences and Humanities. He serves as a JSPS fellow for 2024-2025 at the University of Tokyo.

Meir has composed seven monographs, edited various anthologies, produced several critical editions, and published over 100 articles. Among the books he has written or edited are included –Imagined Hasidism: The Anti-Hasidic Writings of Joseph Perl (Mossad Bialik, 2014); Joseph Perl, Sefer Megale Temirin, annotated edition in 2 volumes (Mossad Bialik, 2014); Kabbalistic Circles in Jerusalem, 1896-1948 (Brill, Aries Book Series, 2016); Literary Hasidism: The Life and Works of Michael Levi Rodkinson (Syracuse University Press, 2016); Habad Hasidism: History, Theology and Image (Zalman Shazar Press, 2016); Gershom Scholem, History of the Sabbatian Movement (Schocken, 2018); Gershom Scholem and the Research of Sabbatianism (Schocken Institute, 2021); Three Lectures on Bratslav Hasidism, Schocken Institute 2024); Three Lectures on Habad Hasidism (Schocken Institute 2024); Wrestling with the Esoteric: Three Lectures on Yehuda Leib Ashlag and 20th Century Kabbalah (Schocken Institute 2024)

2024年8月2日金曜日

日本ユダヤ学会編『ユダヤ文化事典』

 日本ユダヤ学会編、市川裕(編集代表)
『ユダヤ文化事典』
丸善出版、2024年7月

【内容紹介】
 ユダヤ教は、啓示(超越的な神)がこの世の人間たちに対して現れるという現象を基盤とする一神教であり、ユダヤ民族の民族宗教である。その宗教の独自性ゆえに周囲の異邦人により常に差別され迫害される危険にさらされたが、宗教による絆によって結ばれた一つの民として独自の存在を保持してきた。
 本事典は、近現代のユダヤ(宗教および人)の文化に焦点をあてている。古代から現代まで、領土をもたず、世界中に集団が広がりながらも、ユダヤ教という宗教によってのみ相互の絆を守り、一つの民として独自の存在を保持・生き抜いてきたユダヤ人の文化の営みを網羅的に把握することを目指した。
 ユダヤ教の概念から民族の歴史、世界各地での様相、経済・文化的活動、日本との関わりなど、全16章304項目を執筆者156名による書下ろしで解説。

目次および詳細は下記のウェブサイトにて
https://www.maruzen-publishing.co.jp/item/b306003.html

文化事典シリーズ
『キリスト教文化事典』『イスラーム文化事典』『ユダヤ文化事典』

2024年6月11日火曜日

日本ユダヤ学会2024年度公開シンポジウム『内側からのイスラエルとパレスチナ』

 日本ユダヤ学会2024年度公開シンポジウム

『内側からのイスラエルとパレスチナ』

日時:2024年7月7日(日)
会場:東京大学駒場キャンパス21KOMCEE West3階K303
・zoomによるハイブリッド形式での開催となります。

*学会の会員以外の方で公開シンポジウムの参加をご希望の方は事前申込が必要です。
学会のホームページにある申込フォームから申し込んでください
https://jewishstudiesjp.org/2024/06/10/2024symposium/

【プログラム】

14:00-10 開会の辞(市川裕理事長)

14:10-50 犬塚悠太(東京大学大学院)
「イスラエル国におけるユダヤ教の諸相:分岐する宗教シオニズムを事例に」

宗教はさまざまな側面から社会・政治的な問題と関わるがイスラエルにおいてもそれは例外ではない。今日のイスラエルにおいては「宗教化」という現象が生じているとされ、軍隊、教育をはじめとした社会の諸側面で宗教の影響が強まってきているほか、2022年の選挙による宗教政党の台頭と司法改革、それに伴う国内の分断という点でも宗教はますます重要なテーマとなってきている。他方でイスラエルにおけるユダヤ教は複雑な状況にあり、一口に宗教と言っても複数の方向へと分岐している。本法国では現代のイスラエル社会における正統派ユダヤ教がどのように人々を分断したり結びつける作用を果たしているのか、そしてそれはどういった歴史的展開を持っているのかを示す事例として、超正統派に近づく宗教シオニズムと、世俗派との積極的な協働を目指す宗教シオニズムという二つの方向性について論じる。(質疑応答10分)

休憩10分 (15:00-10)

15:10-50 保井啓志(人間文化研究機構人間文化研究創発センター研究員/同志社大学研究開発推進機構学術研究員)
「動物論から見るイスラエル社会の諸相」

ガラント国防相の「人間動物」発言に代表されるように、とりわけ10月7日以降のイスラエル社会では、人間と動物の関係が再び政治の表舞台に立っている。この人間と動物の関係を対象にした研究は動物論あるいは批判的動物研究という名で近年日本でも紹介され注目を集めてきた。これらの研究領域は、動物の権利運動、菜食主義の実践、人間-動物間関係や「人間性」の持つ意味など広範な射程を含むものである。そのため、パレスチナ問題をめぐって人間性や権利、倫理性が複雑に絡み合うイスラエルの現在の社会的状況を理解するのに、動物論の果たすべき役割は大きい。本報告では近年の動物論の議論を追いながら、①動物の権利運動の展開、②倫理的な優位性、③人間性とテロリズムの三点を取り上げる。そして人間と動物に関する事柄がどのようにイスラエルの植民地主義とナショナリズムにつながってきたのかを論じることで、イスラエル社会の諸相を明らかにしたい。(質疑応答10分)

休憩10分 (16:00-10)

16:10-50 南部真喜子(東京外国語大学総合国際学研究院特別研究員)
「エルサレムのパレスチナ人コミュニティにおける逮捕と拘禁」

本報告では、占領下エルサレムのパレスチナ人コミュニティ(東エルサレム)における、イスラエル当局による若者の逮捕や拘禁がもたらす影響について考えてみたい。1967年の併合以来、東エルサレムはイスラエルの行政管轄下にある。実際には、イスラエルの入植・植民地政策によって、コミュニティの維持をはじめとする日常のあらゆる生活空間に支配の侵食が進んでいる。若者の逮捕や拘禁は、「セキュリティ維持」の名目以上に、パレスチナ人社会を弱体化するひとつの手段として捉えられるだろう。ここでは、投獄の体験が、「子どもでいること」や「大人になること」といった個人の生のあり方にどのような影響を及ぼしているのか、友人関係や家族関係にどのような差異を生み出しているのか、そしてそれらを乗り越えようとする言説や動きについて検討したい。(質疑応答10分)

休憩10分 (17:00-10)

17:10-50 全体討論


2024年5月28日火曜日

京都ユダヤ思想学会第17回学術大会

京都ユダヤ思想学会第17回学術大会

日時: 2024年6月22日(土)
会場: 同志社大学今出川キャンパス良心館107教室(RY107)およびオンライン(Zoom)

【参加方法】  
参加を希望される方は下記登録フォームから登録をお願いします(登録締切は6月17日(月))。
https://docs.google.com/forms/d/1hu9MtnnjKz-E7VH2FDCuG9OCMQGIaTNLYkQchOJz_ug/edit

ご参加に必要な情報(オンライン参加のURLなど)は、6月20日(木)以降、ご登録いただいたメールアドレスにお知らせいたします。
6月21日(金)17:00までにメールが届いていない場合は、お手数ですが、事務局(hebraicaveritas@gmail.com)までご連絡ください。
なお、総会を除き、非会員の方も参加可能です。

【スケジュール】

 9:00 受付開始(対面会場開場およびZoom開室)

【個人研究発表】(9:10−12:30)

9:10- 9:50 研究発表①
「デリダのレヴィナス論「暴力と形而上学」の再考:ドゥンス・スコトゥスの存在の一義性を背景に」
発表者:長坂 真澄(早稲田大学)
司会:馬場 智一(長野県立大学)

9:50-10:30 研究発表②
「聖書~第二神殿時代までの呼称から考える「ユダヤ人」」
発表者:大澤 耕史(中京大学)
司会:津田 謙治(京都大学大学院文学研究科教授)

10:30-11:10 研究発表③
「初期フロムにおけるユダヤ教についての思索 ―『ユダヤ教の律法』を中心に」 
発表者:五反田 純(京都大学大学院)
司会:佐藤 貴史(北海学園大学)

11:10-11:50 研究発表④ 
「ブーバーとベングリオンによる「理想的な地」の理解―聖書注解を中心に―」
発表者:平岡 光太郎(同志社大学)
司会:小野 文生(同志社大学)

11:50−12:30 研究発表⑤ 
「エリヤ・レヴィータからゼバスティアン・ミュンスターへの書簡(1531年)の和訳及びその背景と考察
発表者:御堂 大師(無所属)
司会:手島 勲矢(無所属)

【シンポジウム】(13:30−17:15)

「シャガールとイディッシュ文化」

13:30-13:50 導入   
吉野 斉志(関西大学)「聖書とユダヤを描いた画家シャガール」

13:50-14:30 発題① 
圀府寺 司(大阪大学)「「ユダヤ人」近代画家としてのシャガールの特異性」

  (休憩)

14:40-15:20 発題② 
樋上 千寿(NPO法人イディッシュ文化振興協会)「アンスキーの『ディブック』と、シャガールの「ユダヤ劇場壁画」」

15:20-16:00 発題③
細見 和之(京都大学)「シュテットルにおけるハシディズム―マルティン・ブーバー『ラビ・ナフマンの物語』から―」

 (休憩)

16:15-17:15 質疑応答

【シンポジウム】 「シャガールとイディッシュ文化」
吉野 斉志(シンポジウム企画担当/関西大学非常勤講師)
マルク・シャガール(1887-1985)は20世紀でもっとも有名なユダヤ人画家の一人であり、大衆的にも高い人気がある。聖書に由来する主題や東欧ユダヤ人の伝統文化を描いたその作品は、しばしば聖書やユダヤに関する書籍の挿画にも使われてきた。
しかし、シャガール作品のユダヤ文化的背景は、よく知られているとは言えない。実際、ロシアのヴィテブスク(現ベラルーシ)でイディッシュ語を母語とするユダヤ人の家庭に生まれてロシア語で公教育を受け、ユダヤの伝統に反して画家となり、フランスで活躍した彼のアイデンティティ自体が、一筋縄ではいかないものである。ましてや、これらの言語と東欧ユダヤ文化までも踏まえて作品を解釈できる研究者が少なかったのも、無理からぬことと言えるだろう。
とはいえそんな中でも、シャガールの作品がイディッシュ語の諺やミドラッシュを踏まえていることを指摘した Amichai-Maisels の研究は、一般向けの美術書などでも断片的ながら引用されており、2003年には Benjamin Harshav によるシャガールの著述・書簡(多くは原文イディッシュ語)の英訳および解説が刊行されている。日本でも2011年に圀府寺司編『ああ、誰がシャガールを理解したでしょうか?』が出版されたのは、大きな一歩であった。
本シンポジウムでは3名の研究者を招いて、シャガールの作品理解を進める予定である。まずは近年の研究によって明らかになってきたシャガール作品の背景と欧米の美術界におけるシャガール像の形成について圀府寺司氏(大阪大学名誉教授)が、ついでクレズマー音楽とシャガール作品の関係について、樋上千寿氏(NPO法人イディッシュ文化振興協会)が論じる。最後にシャガール作品そのものからは離れて、マルティン・ブーバーの『ラビ・ナフマンの物語』に見られるシュテットルとハシディズムの描写を細見和之氏(京都大学)が論じる。




2024年2月17日土曜日

『ユダヤ・イスラエル研究』第37号(2023年)

 日本ユダヤ学会

『ユダヤ・イスラエル研究』第37号(2023年)

目次

〈研究ノート〉

平田文子「ビュイッソンの『初等教育学辞典』におけるジョゼフ・シモン:普遍道徳思想に焦点を当てて」(1-8頁)

野村真理「イギリスにおけるユダヤ人難民の受け入れ 1933~1939年」(9-16頁)

〈研究動向〉

西村木綿「写真パネル展「リフカの日記」とシンポジウム「ウッチから考えるホロコースト」」(17-25頁)

〈シンポジウム アメリカとユダヤ人—21世紀からの検証〉

石黑安里「解題」(26頁)

近藤佑樹「リンドバーグ大統領とフィリップ少年—The Plot Against Americaから読み解く現代アメリカの姿」(27-35頁)

堀邦維「ゲットーからアメリカへ」(36-46頁)

〈書評〉

阿部望:村岡崇光編訳『精選 死海文書』(47-51頁)

大澤香:C.G. シュウェンツェル著、波部雄一郎訳『ヘロデ大王』(52-53頁)

櫻井丈:市川裕著『ユダヤ的叡智の系譜―タルムード文化論序説—』(54-57頁)

鶴見太郎:バシール・バシール+アモス・ゴールドバーグ著、小森謙一郎訳『ホロコーストとナクバー歴史とトラウマについての新たな話法』(58-61頁)

野村真理:ルータ・ヴァナガイテ/エフライム・ズロフ著、重松尚訳『同胞:リトアニアのホロコースト 伏せられた歴史』(62-64頁)

宮崎悠:野村真理著『ガリツィアのユダヤ人—ポーランド人とウクライナ人のはざまで【新装版】』(65-66頁)

藤岡俊博:内田樹著『レヴィナスの時間論:『時間と他者』を読む』(67-70頁)

〈新刊紹介〉

コヘン・シラ・マルカ:ツヴィ・ヴァイル著、母袋夏生・広岡杏子・波多野苗子訳『首相が撃たれた日に』(71頁)

〈大会報告要旨〉

第19回学術大会報告要旨(72-73頁)

〈英文要旨〉(74-75頁)

2024年2月2日金曜日

シンポジウム『タハケモニ』および中世ヘブライ・アラブ物語文学

シンポジウム

『タハケモニ』および中世ヘブライ・アラブ物語文学


シンポジウム概要

本シンポジウムは、ヘブライ語やアラビア語で書かれた中世物語文学の世界へと皆様を招待するものです。中世ヘブライ文学の傑作であるイェフダ・アルハリーズィ『タハケモニ』、もう一つのアラビアン・ナイトとも呼ばれる『百一夜物語』、そしてアラブ・イスラーム社会に伝わる至高の純愛物語『バヤードとリヤード』など、中東一神教文明から生み出されたさまざまな優れたヘブライ・アラブ物語文学があります。その豊饒な世界を、ヘブライ文学の勝又直也氏(京都大学)と飯郷友康氏(東京大学)が、またアラブ文学の鷲見朗子氏(京都ノートルダム女子大学)とハイサム・マフムード・シャルカーウィ氏(ジャヌーブ・アルワーディ大学/エジプト)、アフマド・ゼイネッディーン氏(アル・アズハル大学/エジプト)が、さまざまな角度から紹介します。それも個々の作品の紹介に留まらず、比較文学・文化論の観点から、ヘブライ語世界とアラビア語世界の文学的・宗教的・社会的な影響関係にまで足を踏み入れることを本シンポジウムは目指しています。各発表者による提題の後には、参加者の皆様との全体討議の時間も設けられますので、ぜひ奮ってご参加ください。

開催日時・場所
2024年3月16日(土)13:00-16:40
東京大学本郷キャンパス法文一号館215教室

実施方法
ハイブリッド形式:対面およびzoomによるオンラインでの実施

申し込み先
いずれの方法で参加される場合でも、下記のGoogleフォームからお申し込みください。
https://forms.gle/8onaekSh978jfUTA9 

タイムスケジュール
司会:大澤耕史(中京大学)

13:00-13:10 趣旨説明、講演者紹介

第一部
13:10-14:10 基調講演
勝又直也(京都大学)
『タハケモニ』:マイノリティ作家によるヘブライ語復興運動

14:10-14:25 コメント
飯郷友康(東京大学)

14:25-14:40 休憩

第二部
14:40-15:10 報告1
鷲見朗子(京都ノートルダム女子大学)
「『百一夜物語』所収の「七人の大臣の物語」」

*本報告は英語でおこなわれます
Akiko Sumi, Kyoto Notre Dame University
The Story of the Seven Viziers in The Hundred and One Nights

15:10-15:40 報告2
ハイサム・マフムード・シャルカーウィ(ジャヌーブ・アルワーディ大学/エジプト)
アフマド・ゼイネッディーン(アル・アズハル大学/エジプト)
アラブの純愛物語『バヤードとリヤード』:時代、場所、重要性

*ハイサム氏の報告は英語でおこなわれます。
アフマド氏の報告はアラビア語でおこなわれ、日本語の全訳を配布いたします。
Haitham M. Sharqawy, South Valley University
Ahmed Zain Eddin, Al-Azhar University
Bayad wa-Riyad: An Arabic Love Story – Time, Place, Importance”

15:40-16:40 質疑応答

主催
日本学術振興会科学研究費助成事業
「総合的な聖書の「語り直し」学-古代から現代のユダヤ文学における発展とその学際性」
基盤研究(A)研究課題/領域番号:21H04347 研究代表者:勝又直也(京都大学)

共催
日本学術振興会科学研究費助成事業
「百一夜物語におけるミサンドリー:「王子と七人の大臣の物語」のジェンダー論的分析」
基盤研究(C)研究課題/領域番号:23K00470 研究代表者:鷲見朗子(京都ノートルダム女子大学)

連絡先
大澤耕史(中京大学)
k-osawa(アットマーク)lets.chukyo-u.ac.jp 
*アットマークを@に変更してください。




2024年1月28日日曜日

Holger Zellentin教授研究セミナー

講師:
ホルガー・ツェッレンティン教授
テュービンゲン大学
(Prof. Holger Zellentin, The University of Tuebingen)

研究セミナー
イエスと「掟」:新約聖書、タルムード、およびクルアーンにおける律法の確証の問題
(“Jesus and the Law: Confirming the Torah in the New Testament, the Talmud and the Qur‘an”)

レスポンダント:
志田雅宏(東京大学)

開催日時:
2024 年2 月23日(金)午前10:00-11:30

開催形式:
ハイブリッド形式

開催場所:
東京大学駒場第二キャンパス3号館中2階セミナー室
 (オンライン参加者には、後日URLを送付)

いわゆる「アブラハムの宗教」に属する諸宗教を分断する差異化の契機について、ナザレのイエスと律法の関係はまさしく表徴的であるといえるでしょう。神の啓示としての掟(ノモス)の有効性と救済史の完成(テロス)としてのメシアの同定という一神教における二つの核心的なテーマが交差するこの場においては、ユダヤ教・キリスト教・イスラーム教の間の離合がある先鋭的な表現をともなって現れていると考えられます。

本研究セミナー「イエスと「掟」:新約聖書、タルムード、およびクルアーンにおけるトーラーの確証の問題」では、マタイ5:17におけるイエスの有名な言葉「私が律法や預言者を廃棄するために来た、と思ってはなりません。廃棄するためではなく、成就するために来たのです」の解釈の系譜を綿密にたどることで、掟とメシアをめぐる一神教伝統の「捩れ」の関係に新たな光をあてることが試みられます。

講師のホルガー・ツェッレンティン教授(テュービンゲン大学))は、古代末期を主たる研究対象とし、一神教の法文化、キリスト教ユダヤ派と初期イスラーム、宗教論争といった幅広い分野に亘って、傑出した業績をあげている宗教学者です。本セミナーでも同氏の広範なパースペクティブに基づく鋭い分析が提示されることが期待されます。(内容の詳細と講師紹介については、英語の梗概をご参照ください)。

本講演は、山城貢司特任研究員がプロジェクト・リーダーとして推進する国際研究プロジェクトHumanitas Futuraの一環として、開催されます。

主催:
東京大学先端科学技術研究センター(グローバルセキュリティ・宗教分野/池内研)
東京大学先端科学技術研究センター・創発戦略研究オープンラボ(ROLES)

共催:
東京大学文学部・大学院人文社会系研究科宗教学宗教史学研究室

参加登録:
下記のリンク先のフォームにご記入ください。

https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSfBWKqfwYQ8qeUdoXoq5ZTND6JiJgY16abRITKB3q5vR6SlEg/viewform?usp=sf_link

問い合わせ先
東京大学先端科学技術研究センター特任研究員(グローバルセキュリティ・宗教分野) 
山城貢司 (koji.yamashiro(アットマーク)gmail.com)
*アットマーク部分を@に変えてください。

英語梗概

“Jesus and the Law: Confirming the Torah in the New Testament, the Talmud and the Qur’an”

Abstract: 

Do not think that I have come to abolish the Law or the Prophets; I have come not to abolish but to fulfil” – thus Jesus instructs his audience according to the unique passage in Matthew 5:17. This presentation seeks to establish the original meaning of Matthew and then traces the passage’s rivetingly diverse history of interpretation in late antique Christianity and Judaism up to its reformulation Q 3 Sūrat Āl ʿImrān 48-50, in the Qur’an. 

Professor Holger Zellentin, University of Tübingen, Germany, is an award-winning scholar of Late Antiquity, with a focus on Talmudic and Qur’anic studies. He combines literary, legal and historical approaches in order to understand shared and diverging patterns within Jewish, Christian and early Islamic cultural traditions. He has received funding from the European Research Council, the British Academy, and the Arts and Humanities Research Council (UK), and has been awarded a Philip Leverhulme Prize (2014) as well as an ERC Consolidator Grant (2020-2025). He currently serves as the chair of the board of the International Qur’anic Studies Association, and has previously served on the steering committee of the British Association for Jewish Studies. His publications include Rabbinic Parodies of Jewish and Christian Literature (Tübingen, 2010) and Law Beyond Israel: From the Bible to the Qur’an (Oxford, 2022).


Guy Stroumsa教授研究セミナー・講演

講師
ギイ・ストロムザ教授
エルサレム・ヘブライ大学/オックスフォード大学

(Prof. Guy Stroumsa, The Hebrew University of Jerusalem/the University of Oxford)

研究セミナー:
オリエンタリズムと一神教:エルネスト・ルナンによるユダヤ教とイスラーム教
(Orientalism and Monotheism: Renan on Judaism and Islam)

特別講演:
古代末期における二元論の多様性
(Varieties of Dualism in Late Antiquity)

開催日時:
2024 年2 月16日(金)10:30ー12:00 (セミナー)、13:00ー14:30 (講義)

開催形式:
ハイブリッド形式

開催場所:
東京大学本郷キャンパス法文1号館215教室 (オンライン参加者には、後日URLを送付)

 東京大学先端科学技術研究センター グローバルセキュリティ・宗教部門では、エルサレム・ヘブライ大学/オックスフォード大学のギイ・ストロムザ教授の2024年2月の来日に合わせて、研究セミナーと特別講演を開催します。ストロムザ教授は、キリスト教学、アブラハム宗教比較研究、古代末期研究、宗教学史といった幅広い分野に亘って、数多くの著書や論考を著している世界的に著名な宗教学者です。今回、同氏の最近の研究テーマの中から2本ほど選んでいただき、議論の場に供していただくことになりました。

 研究セミナー「オリエンタリズムと一神教:ルナンによるユダヤ教とイスラーム教」では、近著The Idea of Semitic Monotheism: The Rise and Fall of a Scholarly Myth (Oxford 2021)でも扱われた所謂「セム的一神教」の概念の歴史的・イデオロギー的背景を巡って、特に19世紀のフランスの思想家・宗教史家エルネスト・ルナンのユダヤ教理解とイスラーム教理解に焦点が当てられます。これと関連して、本セミナーではさらに、イスラエルにおける宗教学の歴史やアブラハム宗教研究の現況についてもお話しを伺う予定です。

特別講演「古代末期における二元論の多様性」では、「古代の終わり」の諸局面における二元論の系譜が考察の対象となります。ゾロアスター教からユダヤ教とキリスト教における展開を経て、グノーシス主義、マルキオン主義、マニ教にまで至る二元論のさまざまな形態を概観し、その上で一神教と二元論の間のダイナミズムを浮き彫りにすることが目指されます。イスラーム教の成立についても同じ文脈において新たな光が投じられます。

 研究セミナー、特別講演共々、アブラハム宗教研究の最前線に触れる貴重な機会となると思われます。多くの方々の積極的なご参加を心よりお待ちいたしております(詳細内容と講師紹介については、英語の梗概をご参照ください)。

本講演は、山城貢司特任研究員がプロジェクト・リーダーとして推進する国際研究プロジェクトHumanitas Futuraの一環として、開催されます。

主催:
東京大学先端科学技術研究センター(グローバルセキュリティ・宗教分野/池内研)
東京大学先端科学技術研究センター・創発戦略研究オープンラボ(ROLES)

共催:
東京大学文学部・大学院人文社会系研究科宗教学宗教史学研究室

参加登録:
下記のリンク先のフォームにご記入ください。

https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSeo7STr439ytxKbULJXs8rKN38UZyZz76SeEIRqHH0oqrFbww/viewform?usp=sf_link

問い合わせ先:
東京大学先端科学技術研究センター特任研究員(グローバルセキュリティ・宗教分野)
山城貢司 (koji.yamashiro(アットマーク)gmail.com)
*アットマーク部分を@に変えてください

英語梗概

“Orientalism and Monotheism: Renan on Judaism and Islam”

Throughout the nineteenth century, the birth of what one may call philologia orientalis and the discovery of the linguistic similarities between Sanskrit and European languages radically transformed the perception of the East, much weakening the idea of a family relationship between Judaism, Christianity and Islam. The case of Ernest Renan (1823-1892) is here emblematic. By far, Renan is the central figure among French historians of religions, and belongs to the most remarkable European scholars. The presentation will survey Renan’s conception of Judaism and Islam, through his invention of the category of “Semitic religions.” We shall reflect on its consequences on the study of monotheism among historians of religions, as well as on the development of anti-Semitism and Islamophobia in the last decades of the century. Further reflections will bear on the challenges of the comparative study of the Abrahamic religions in Israel today.

“Varieties of Dualism in Late Antiquity” 

During the first centuries of the Christian era, and until the last stages of late antiquity, with the birth and early development of Islam, dualist religious movements were thriving. Dualism, which had been the core of Zoroastrian theology for centuries, had had a powerful impact throughout the Near East, which remained for a long time under Persian rule. Thus, dualist trends were already present in Judaism. The coming of Christianity also brought to the emergence and development of various Gnostic trends, and of Marcion’s dualistic heresy. In the third century, Manichaeism appeared, as a radically dualist world religion. 

The purpose of my lecture is twofold. Side by side with an overview of those various dualist religious movements, I shall seek to identify the implications of such dualism, in the hope to understand more precisely the dynamics between monotheism and dualism.

Guy G. Stroumsa is Martin Buber Professor Emeritus of Comparative Religion, The Hebrew University of Jerusalem and Professor Emeritus of the Study of the Abrahamic Religions, and Emeritus Fellow of Lady Margaret Hall, University of Oxford. He is a Member of the Israel Academy of Sciences and Humanities and holds an honorary doctorate from the University of Zurich. He received the Humboldt Research Award, the Leopold-Lucas Prize, and the Rothschild Prize. He is a Chevalier de l’Ordre du Mérite. 

Author of eighteen books and one hundred and fifty articles, editor or co-editor of twenty-one books. Among his recent publications: The Idea of Semitic Monotheism: The Rise and Fall of a Scholarly Myth (Oxford, 2021); The Crucible of Religion in Late Antiquity (Tübingen, 2021); Religion as Intellectual Challenge in the Long Twentieth Century (Tübingen, 2021); Religions d’Abraham: histoires croisées (Geneva, 2017), The Scriptural Universe of Ancient Christianity (Cambridge, Mass, 2016), The Making of the Abrahamic Religions in Late Antiquity (Oxford, 2015), A New Science: the Discovery of Religion in the Age of Reason (Cambridge, Mass., 2010), and The End of Sacrifice: Religious Transformations of Late Antiquity (Chicago, 2009; paperback 2012; Original French edition, 2005; also Italian, German and Hebrew translations). 

He has been a Fellow at Dumbarton Oaks (Washington), The Princeton Center for Hellenic Studies (Princeton), the Istituto di Studi Avanzati (Bologna), the Annenberg Institute (Philadelphia), The Frenkel Center (Ann Arbor), the Wissenschaftskolleg (Berlin). 

He has held Visiting Professorships at the École Biblique et Archéologique Française and at the Theologisches Studienjahr (Jerusalem), the École Pratique des Hautes Études, the École des Hautes Études en Sciences Sociales and the Collège de France (Paris), the Scuola Normale Superiore (Pisa), the University of Geneva, the Complutense University (Madrid), the Central European University (then Budapest), Pennsylvania University (Philadelphia), the University of Chicago, the University of Montreal. 

He has given titled and keynote lectures at the universities of Cambridge, Oxford, London (School of Oriental and African Studies), Jena, Bayreuth, Harvard, Leuven, Krakow, Münster, Humboldt (Berlin), at the Académie des Inscriptions et Belles-Lettres and the Académie des Sciences Morales et Politiques (Paris).