日本ユダヤ学会2024年度公開シンポジウム
『内側からのイスラエルとパレスチナ』
日時:2024年7月7日(日)
会場:東京大学駒場キャンパス21KOMCEE West3階K303
・zoomによるハイブリッド形式での開催となります。
*学会の会員以外の方で公開シンポジウムの参加をご希望の方は事前申込が必要です。
学会のホームページにある申込フォームから申し込んでください
https://jewishstudiesjp.org/2024/06/10/2024symposium/
【プログラム】
14:00-10 開会の辞(市川裕理事長)
14:10-50 犬塚悠太(東京大学大学院)
「イスラエル国におけるユダヤ教の諸相:分岐する宗教シオニズムを事例に」
宗教はさまざまな側面から社会・政治的な問題と関わるがイスラエルにおいてもそれは例外ではない。今日のイスラエルにおいては「宗教化」という現象が生じているとされ、軍隊、教育をはじめとした社会の諸側面で宗教の影響が強まってきているほか、2022年の選挙による宗教政党の台頭と司法改革、それに伴う国内の分断という点でも宗教はますます重要なテーマとなってきている。他方でイスラエルにおけるユダヤ教は複雑な状況にあり、一口に宗教と言っても複数の方向へと分岐している。本法国では現代のイスラエル社会における正統派ユダヤ教がどのように人々を分断したり結びつける作用を果たしているのか、そしてそれはどういった歴史的展開を持っているのかを示す事例として、超正統派に近づく宗教シオニズムと、世俗派との積極的な協働を目指す宗教シオニズムという二つの方向性について論じる。(質疑応答10分)
休憩10分 (15:00-10)
15:10-50 保井啓志(人間文化研究機構人間文化研究創発センター研究員/同志社大学研究開発推進機構学術研究員)
「動物論から見るイスラエル社会の諸相」
ガラント国防相の「人間動物」発言に代表されるように、とりわけ10月7日以降のイスラエル社会では、人間と動物の関係が再び政治の表舞台に立っている。この人間と動物の関係を対象にした研究は動物論あるいは批判的動物研究という名で近年日本でも紹介され注目を集めてきた。これらの研究領域は、動物の権利運動、菜食主義の実践、人間-動物間関係や「人間性」の持つ意味など広範な射程を含むものである。そのため、パレスチナ問題をめぐって人間性や権利、倫理性が複雑に絡み合うイスラエルの現在の社会的状況を理解するのに、動物論の果たすべき役割は大きい。本報告では近年の動物論の議論を追いながら、①動物の権利運動の展開、②倫理的な優位性、③人間性とテロリズムの三点を取り上げる。そして人間と動物に関する事柄がどのようにイスラエルの植民地主義とナショナリズムにつながってきたのかを論じることで、イスラエル社会の諸相を明らかにしたい。(質疑応答10分)
休憩10分 (16:00-10)
16:10-50 南部真喜子(東京外国語大学総合国際学研究院特別研究員)
「エルサレムのパレスチナ人コミュニティにおける逮捕と拘禁」
本報告では、占領下エルサレムのパレスチナ人コミュニティ(東エルサレム)における、イスラエル当局による若者の逮捕や拘禁がもたらす影響について考えてみたい。1967年の併合以来、東エルサレムはイスラエルの行政管轄下にある。実際には、イスラエルの入植・植民地政策によって、コミュニティの維持をはじめとする日常のあらゆる生活空間に支配の侵食が進んでいる。若者の逮捕や拘禁は、「セキュリティ維持」の名目以上に、パレスチナ人社会を弱体化するひとつの手段として捉えられるだろう。ここでは、投獄の体験が、「子どもでいること」や「大人になること」といった個人の生のあり方にどのような影響を及ぼしているのか、友人関係や家族関係にどのような差異を生み出しているのか、そしてそれらを乗り越えようとする言説や動きについて検討したい。(質疑応答10分)
休憩10分 (17:00-10)
17:10-50 全体討論