2023年5月7日日曜日

京都ユダヤ思想学会第16回学術大会(2023年度)

 京都ユダヤ思想学会第16回学術大会

日時:2023年6月24日(土)
会場:同志社大学今出川キャンパス良心館地下1教室(RY地1)およびオンライン(Zoom)
要事前申込(対面・オンライン参加問わず)
申込フォーム
https://docs.google.com/forms/d/1YwklrQdn3VDBXZ3vm2lg3GO3y_oka1atsoOBeDFg694/edit

9:30 受付開始

【個人研究発表】(10:00−12:00)

10:00-10:40 研究発表①「機能主義は唯物論か?パトナムと心身論」
発表者:吉野 斉志(関西大学)
司会:長坂 真澄(早稲田大学)

10:40-11:20 研究発表②「ヒューマニズムによる人間形成(Bildung)の課題―M. ブーバーのユダヤ民族教育論を手がかりに」
発表者:三木 春紀(慶應義塾大学大学院)
司会:田中 直美(福山市立大学)

11:20-12:00 研究発表③「ヨセフ・B・ソロヴェイチクの哲学 ―『ハラハー的人間』から『孤独な信仰者』へ―」
発表者:志田 雅宏(東京大学)
司会:合田 正人(明治大学)

  (休憩)

【シンポジウム】(13:00−17:00)「人称と沈黙: ブーバーとロジャーズから」

第1部 13:00-14:40  司会:平岡 光太郎(同志社大学)
13:00-13:05 挨拶・趣旨説明など 手島 勲矢(シンポジウム企画者)

13:05-13:45 提題① 森岡 正芳 (立命館大学)
「人称と沈黙:ブーバーとロジャーズ「対話」再考」

13:45-14:15 提題② 堀川 敏寛(東洋英和女子学院大学)
「『我と汝』テキストを読み直す」

14:15-14:40 提題③ 手島 勲矢(京都大学)
「ヘブライ語文法の対話:ディクドゥークから考える三人称の存在と沈黙」

(休憩)

第2部 15:00-17:00  司会:平岡 光太郎・手島 勲矢
15:00-15:30 提題④ 平尾 昌宏(立命館大学)
「ブーバーと〈日本語からの哲学〉」

15:30-16:00 提題⑤ 武藤 慎一(大東文化大学)
「シリア・キリスト教から見た『我と汝』」

(休憩)

16:00-17:00 パネリストとフロアの座談会(質疑応答)

シンポジウム「人称と沈黙:ブーバーとロジャーズの「語り」を読み直す」

概要:2023年はブーバーの記念碑的著作『我と汝(Ich und Du)』(1923年)の発刊から100年目になる。『我と汝』は、当時の色々な具体的な社会や政治の対立が、著者の意識の中で、複合的に重なり合って生まれたテキストと想像されるが、第二次大戦後(1957年)、カウンセリング心理学の提唱者カール・ロジャーズは、その『我と汝』の考え方に深く共鳴して、ブーバーに公開の対話を呼びかける(ロブ・アンダーソン著『ブーバー・ロジャーズ対話』2007)。ブーバーは、その呼びかけに最初は乗り気でなかった。それは、大衆化した「対話」概念に、ある種の反発を抱いていたためでもあり、加えて「黙するに時あり、語るに時あり」(コヘレト3:7)と考えるヘブライズムの影響もあるだろう。ユダヤにとって語りと沈黙は、表裏一体でもある。その点をアンドレ・ネエル(『言葉の捕囚』The exile of the Word, from the silence of the Bible to the silence of Auschwitz1981)は、アウシュビッツを語ることが足りないと批判する若いユダヤ世代に対して、聖書の「沈黙」の思考で応答した。

 ブーバーの「我-汝」「我-それ」の根元語は、二者の対話の言語である前に、個人の中にある言語の、文法的な人称を踏まえた、二重構造としても捉えることができる。それはアラブの人々の沈黙の上で成り立つ欧米オリエンタリズムの「対話」の偽善性を批判するエドワード・サイードの人称の感受性(我々と彼らの区別)にも通じる「我」の意識を前提とした構造でもある。対話は、向き合う当事者たちの一人称と二人称の「声」ばかりで成立していない。奪われ抹殺された過去の人々や、圧政下の声を出せない人々の「沈黙」の三人称の声もそこに含まれる。そして「沈黙」は互いの声に耳を傾け合う対話のその時にもある。目前に見つめる「あなた」がいて、その存在の沈黙に向かって応じる言葉が見つからず「黙」してしまう「私」がいる。今、100年を経て、ブーバーとロジャーズの対話に再び向きあって、ユダヤの文脈を超えた「我と汝」の、その哲学的な「語り」の普遍的な意義を、皆で再検討してみたいと思う。(シンポジウム企画担当:手島勲矢)

京都ユダヤ思想学会ウェブサイト(各報告要旨あり)
https://sites.google.com/site/kyotojewish/o-zhirase?authuser=0