2016年6月16日木曜日

宗教史研究会第63回研究会

宗教史研究会
第63回研究会

2016 年 6 月 18 日(土) 13:00-18:00
東洋英和女学院大学大学院 201教室

プログラム
12:30 受付開始

13:00-14:30 発表 1 丸山 大介(防衛大学校准教授)
「スーフィズムにおける媒介-スーダンのタリーカ(スーフィー教団)とサラフィー主義者との
議論を事例として-」

<概要> スーフィー教団(タリーカ)の師は、その宗教的知識はもとより、奇跡の発現などを通
じて、民衆の崇敬対象となってきた。こうした聖者崇敬は、イスラームにおいて、神と人との媒
介という概念を考える上で欠かすことのできない研究対象である。本発表は、スーダンのスー
フィー教団による「媒介者」としての聖者の正当性をめぐる主張と、それに対するサラフィー主
義者の批判を題材に、スーフィズムにおいて神と人との「媒介」という概念がなぜ重要視されて
いるのかを明らかにしたい。

14:30-14:40 休憩

14:40-16:10 発表 2 小堀 馨子(帝京科学大学准教授)
「古代ギリシアの霊媒-デルポイの神託に対する古代ローマ人の態度」

<概要> 古代地中海世界において近代西欧から古典古代と見做されたギリシア・ローマ世界
にも、目に見えない霊的存在と交流を行う霊媒は存在した。その中で最も有名なものはデルポ
イの神託である。古典期ギリシアにおいて、デルポイはアテナイを含めた各地の都市国家から
尊崇を集め、神託の内容は国家の意思決定の指針となるほどの権威があった。同時期に国家
の黎明期にあったローマ人もこの神託を折りに触れて利用していた。しかし、第二次ポエニ戦
争期を最後にローマ人は国家レベルでの神託を用いなくなる。その理由は現時点では二点ほ
ど考えられる。一点目は神託所を媒介にせずともギリシア世界と直接交渉できるようになったこ
と、二点目は古代ローマには神託の代替となるような国家的卜占の手段が複数存在したことで
ある。このような社会背景を元に、神託について哲学の立場から多面的に論じているキケロの
『卜占論』を取り上げ、ローマの知識人の神託や霊媒といった存在に対する態度を検討する。
上記二点の理由の他にローマが神託を重んじなくなる原因があるのか、神託に対するローマ
の態度がヘレニズム世界全体の動向とどのように関連しているかについては更なる検討を要
するであろう。

16:10-16:20 参加者自己紹介
16:20-16:30 休憩

16:30-18:00 発表 3 福 寛美(法政大学沖縄文化研究所兼任所員)
「少年達のシャーマニズム<可視と不可視の境界世界>」

<概要> 奄美にはユタと呼ばれるシャーマンがいる。彼らは幼少時から霊的感受性が強く、や
がてユタになるべき生まれであることを認識し、修業を重ねて成巫する。東京と奄美を行き来し
ながらユタや霊能者として活動する円聖修氏もユタである。円氏について特筆すべきことは、
円氏が少年だった時、同じ高校に霊能の高い少年達がおり、3少年で霊的な冒険を繰り広げ
た、ということである。霊能が高く、不可知の世界を知覚する少年は往々にして孤独になり、異
端視される場合も多いが、円氏は孤独になることなく、3少年の1人として奄美で青春を謳歌し
た。そのような奄美3少年のこと、そして可視と不可視の境界世界について考察してみたい。