2019年12月26日木曜日

宗教史学研究所 第70回研究会

宗教史学研究所
第70回研究会

日時:2010年1月25日(土) 13:30~17:30
会場:東洋英和女学院大学院 六本木校舎201教室

13:30-14:40:発表1 井関大介 「井上円了の妖怪学と宗教学」
14:40-14:50:休憩
14:50-16:00:発表2 丸山空大 「魂の故郷への越境--近代ドイツ・ユダヤ人とアイデンティティの問題」
16:00-16:10:休憩、参加者自己紹介等
16:10-17:20:発表3 三輪地塩 「キリシタン殉教を物語る行為によって生まれる境界」
17:20-17:30:総括、各種報告

発表1 
井関大介 井上円了の妖怪学と宗教学
明治・大正期の哲学者である井上円了(1858-1919)の妖怪学は、近代科学による迷信撲滅運動としては広く知られているものの、その長大で雑駁な内容の全体を通して円了の意図を読み解くような研究はまだ少ない。もとより円了自身の進歩主義的姿勢は顕著であって、迷信の否定とそれによる仏教の近代化を目指したという一般的な評価は妥当ではある。しかし、妖怪学の実態はそれだけにとどまるものでなく、多様な志向性が関連著作の随所に見られる。一方、姉崎正治に始まるとされる現在の宗教学者の系譜意識からは外れているが、円了は日本における「宗教学」の先駆者の一人でもあった。実践を強く志向していたため、まだ客観的学問ではない護教論の段階であったと評価されがちであるが、円了自身は学問により得られる知見とその応用とを区別していたらしい。そのような応用の一つであったと考えられる妖怪学を読み直すことで、円了の「宗教学」について再検討したい。

発表2 
丸山空大  魂の故郷への越境--近代ドイツ・ユダヤ人とアイデンティティの問題
18世紀末にはじまったユダヤ人解放とともに、ドイツのユダヤ人は、近代化するドイツ社会に順応しようとした。しかし政治的権利の漸次的拡大にもかかわらず、ドイツ社会は彼らを異質なものとみなし続けた。その結果ドイツのユダヤ人たちは、順応を目指すイデオロギーを「同化」とよび、固有性の放棄として批判するようになった。19世紀後半に生まれたユダヤ人はナショナリズムの影響のもと、こうした批判を受け入れたが、それは彼ら自身の心身を形作ったイデオロギーの破綻を認めることにほかならなかった。このようにして抱え込むことになったアイデンティティをめぐる葛藤を、しばしば彼らは「境界」の比喩を用いて表象した。これらの境界は、伝統と近代、世俗と宗教、ヨーロッパとユダヤ、現実と希望といったさまざまな領域を画し、精神と身体を貫く。本発表ではフランツ・ローゼンツヴァイクを例に、ドイツ・ユダヤ人の文化的・宗教的アイデンティティ構築の諸相を、境界の比喩(その跳び越え、抹消、移動)に着目して捉え返してみたい。

発表3 
三輪地塩 キリシタン殉教を物語る行為によって生まれる境界
幕末明治期に起こった浦上四番崩れは、近代日本史最大の宗教弾圧事件であるが、この出来事の顛末はフランシスク・マルナス、浦川和三郎、池田敏雄などのカトリック司祭らによって記録されている。彼らが「通史」として浦上キリシタン史を叙述する一方、フランス、リヨン出身のパリ外国宣教会師A・ヴィリオン(Aimé Villion, 1843-1932)は、現地調査とキリシタン講演会という独自の方法でキリシタン史を掘り起こして叙述した。彼はF・ザビエルに対して深い崇敬の念を抱いており、その崇敬の念が彼自身の内なる殉教像(殉教イメージ)を作りだし、浦上キリシタンたちにその像を投影するようにしてキリシタン史を物語っていると考えられる。本研究では、殉教を物語る際に起こる「ステレオタイプの殉教イメージ」による「記憶の呼び起こし」と、そこから生み出される「記憶の創造」の境界について考察する。

2019年12月24日火曜日

『ユダヤ・イスラエル研究』第33号(2019)

『ユダヤ・イスラエル研究』
第33号(2019年12月)

〈シンポジウム 古代後期のユダヤ教研究の諸相〉
解題(市川裕)1
一神教の二つの流れとその歴史的源流(市川裕)3
クムランと死海文書(上村静)13
ローマ帝国の「キリスト教化」とユダヤ教(中西恭子)26

〈翻訳 ユダヤ啓蒙思想とメンデルスゾーン〉
解題(後藤正英)38
ユダヤの伝統への挑戦(シュムエル・ファイナー)(鳥越覚生・訳)40
モーゼス・メンデルスゾーンの現代性(ミヒャ・ゴットリープ)(加藤哲平・後藤正英・訳)50

〈書評〉
市川裕著『ユダヤ人とユダヤ教』(臼杵陽)70
加藤哲平著『ヒエロニュムスの聖書翻訳』(大澤耕史)75
丸山空大著『フランツ・ローゼンツヴァイク』(向井直己)77
森達也著『思想の政治学ーアイザィア・バーリン研究』(市川裕)81
広瀬佳司・伊達雅彦編『ユダヤの記憶と伝統』(三杉圭子)87
イラン・パペ著『パレスチナの民族浄化―イスラエル建国の暴力』・『イスラエルに関する十の神話』(金城美幸)89

〈新刊紹介〉
村田靖子著『エルサレムの悲哀』(鴨志田聡子)94
エトガル・ケレット著『クネレルのサマーキャンプ』(細田和江)96
エヴァ・ホフマン著『シュテットルーポーランド・ユダヤ人の世界』(宮崎悠)97
立山良司編『イスラエルを知るための62章 第2版』(保井啓志)98

〈大会報告要旨〉
第15回学術大会報告要旨99

〈英文要旨〉101

2019年11月27日水曜日

CISMORワークショップ「シオン/エルサレム/聖地」観の再検討:聖書テキストから今日に至るまで」

CISMORワークショップ
第1回「シオン/エルサレム/聖地」観の再検討:聖書テキストから今日に至るまで」


開催日:2019年12 月21日(土)
会場:至誠館3階会議室(同志社大学、今出川キャンパス)

プログラム
10:30-10:40 司会:石黑安里
挨拶:アダ・タガー・コヘン(CISMOR センター長・同志社大学)
趣旨説明:石黑安里

(発表時間 25 分+質疑 10 分)

Session A: 古代 司会:平岡光太郎
10:40-11:15
北村 徹(同志社大学)
「捕囚における希望の所在 −第二イザヤとエゼキエルにおけるシオンに注目して」

11:15-11:50
加藤哲平(日本学術振興会)
「ヒエロニュムスの聖地巡礼について」

お昼休憩 11:50-13:20

Session B :中世 司会:石黑安里
13:20-13:55
嶋田英晴(國學院大學)
「中世におけるイスラームとユダヤの巡礼紀行文学(リフラ)について」

13:55-14:30
志田雅宏(早稲田大学)
「ナフマニデスのアリヤー:思想・戒律・現実」

休憩 14:30-14:40
Session C: 近現代 司会:加藤哲平
14:40-15:15
平岡光太郎(同志社大学)
「マルティン・ブーバーのエルサレム観−1938 年のヘブライ大学における講演を中心に」

15:15-15:50
石黑 安里(同志社大学)
「アメリカ改革派ユダヤ教のシオン解釈:『コロンバス綱領』(1937 年)に至る背景」

休憩 15:50-16:00

16:00-16:30
コメント (各 15 分) 司会:平岡光太郎
➀市川裕先生(東京大学)
➁竹内裕先生(熊本大学)

16:30-17:55 全体討論

17:55-18:00
閉会の挨拶:アダ・タガー・コヘン(CISMOR センター長・同志社大学)、平岡光太郎

CISMORウェブサイトでの案内


2019年11月3日日曜日

日本ユダヤ学会関西例会

日本ユダヤ学会
関西研究例会

日時:2019年12月1日(日)14時30分~17時45分
会場:同志社大学 扶桑館1階107(今出川キャンパス *地下鉄烏丸線「今出川」駅から徒歩1分)

報告1
14:30~15:30 石黑 安里 会員
「1910~1920年代のアメリカにおける『シオニズム』の多義性」
アメリカのユダヤ人にとってシオニズム運動は『二重の忠誠』を疑われるため忌避されるべきものとみなされてきた。またユダヤ教の論理からすると、シオニズム思想は容認できないものであった。しかし、改革派ユダヤ教のラビの中にもスティーブン・S・ワイズ(1874-1949)などのシオニストが登場する。本報告では、1910年代から1920年代のアメリカ・ユダヤ社会の指導者の「シオニズム」観の多義性に着目し、「シオニズム」をアメリカ・ユダヤ人の統合の原理として解釈しなおそうとした試みについて考察する。
15:30~16:00 質疑応答

16:00~16:15 休憩

報告2
16:15~17:15 北 彰 会員
「パウル・ツェランのブカレスト詩編」 
詩人パウル・ツェランは戦後ドイツ語文学の中で大きな存在とみなされている。現在のウクライナ、かつてのハプスブルク帝国の辺境に位置する街チェルノヴィッツに1920年にユダヤ人の両親のもとに生まれた。両親をナチにより殺されている。自身辛くも命をながらえ、戦後はソ連領となった故郷の街からブカレストへ逃れ、次いでウィーンを経てパリに定住した。1970年に自死している。今まであまり照明を当てられていないツェランのブカレスト詩編について伝記的事実にも目配りしながら報告したい。
17:15~17:45 質疑応答

2019年10月12日土曜日

『ユダヤ教とキリスト教』

上智大学キリスト教文化研究所編
『ユダヤ教とキリスト教』
(リトン、2019年)

高橋洋成
「イエスの時代の言語生活―イエスは何語を使ったか?―」

志田雅宏
「中世ユダヤ教世界におけるイエスー聖書解釈と民間伝承―」

武井彩佳
「ホロコースト後のユダヤ人とキリスト教徒―キリスト教への改宗者の戦後―」

2018年度 聖書講座 シンポジウム
「ユダヤ教とキリスト教」


2019年9月30日月曜日

日本ユダヤ学会第16回学術大会

日本ユダヤ学会
第16回学術大会

日時 10月26日(土) 14:00~18:00
会場 学習院女子大学 2号館222教室 

<学術大会プログラム>
14:00-14:05
学術大会開催のあいさつ (学会理事長:市川裕)

14:05-14:35
①大澤耕史(中京大学)
「古代世界のユダヤ教の境界意識――『異教徒』『背教者』を中心に」
現代世界の「ユダヤ人」を考える際に、国籍や出身地、宗教性の度合いなどで様々な区別がなされることは、もはや周知の事実であろう。しかし古代世界で考えてみると、もちろん資料的制約が大きいという前提はあるものの、「ユダヤ人」というくくりで広大な地域の様々な人々を安易に同一視しているのが実情ではないだろうか。本報告はこの疑問点から出発し、古代世界のユダヤ教文献の中で、何が「ユダヤ人」とそれ以外をわけているのかを単語レベルで分析する。まずは「ユダヤ人」内部の自己認識において、彼らの境界意識の一端の解明を試みるものである。(司会:上村静会員)
14:35-14:50 質疑応答

14:50-15:20
②袁浩春(東京大学大学院)
「モーセをめぐるユダヤの聖書解釈——―出エジプト記2章11、12節を中心に」
今日のユダヤ教は、二重トーラーへの理解と解釈に対するモーセの最高の権威性を認め、「モシェ、ラビヌー(われらの師であるモーセ)」という表現と共に、二重トーラーの最初の教師という位置付けで、ユダヤ教内部に定着させた。しかし、出エジプト記から始まったモーセの生涯、そして彼が引き起こした数々の奇跡など、これらのすべての出来事を法解釈(ハラハー)に帰結することができない。故に、法以外の部分(アガダー)を参照し、「モシェ、ラビヌー」という表現の形成経緯の一面を補いたい。(司会:上村静会員)
15:20-15:35 質疑応答

15:35-16:05
③神田愛子(同志社大学大学院)
「人の創造物語から見たマイモニデスにおける質料と形相の概念」
マイモニデスは『迷える者の手引き』第二部30章において、創世記2章の人間の創造物語に言及し、男と女は同時に創造され、別個であると同時に一体であると主張している。彼は『手引き』第三部8章で、人間の男女の不可分性を質料と形相の不可分性から説明し、『手引き』第一部17章では、プラトン主義者が質料を女性とし、形相を男性と称していると述べている。本発表では、マイモニデスの質料と形相の概念を、『手引き』第二部30章を中心とした、彼の人間創造の理解に基づいて考察する。(司会:市川裕会員)
16:05-16:20 質疑応答

16:20-16:30 休憩

16:30-17:00
④青木良華(東京大学大学院)
「ヴォロジン・イェシヴァ考察――ミトナグディーム揺籃の場」
19世紀初頭に当時のリトアニアの町ヴォロジンに創設されたイェシヴァには、東欧だけでなく欧米各地から数多くの優秀なユダヤ人の若者が集まり、彼らは日々トーラーやタルムードなどの聖典学習に没頭した。本発表では、ミトナグディームと呼ばれるユダヤ教正統派の繁栄の象徴とも言えるこのイェシヴァについて、その背景となる歴史や思想とともに紹介する。どのような歴史的展開を辿ったのか、学生たちがどのような教育を受けていたのかなどについて主に発表する予定である。(司会:鶴見太郎会員)
17:00-17:15 質疑応答

17:15-17:45
⑤平岡光太郎(同志社大学一神教学際研究センター)
「マルティン・ブーバーとゲルショム・ショーレムによる聖性についての論争――ハスィディズム理解を中心に」
本発表では、20世紀の代表的なユダヤ思想家の1人であるマルティン・ブーバー(Martin Buber, 1878-1965)とユダヤ神秘主義研究の大家であるゲルショム・ショーレム(Gershom Scholem, 1897-1982)のあいだに見られる「聖性」に関する立場の違いを、18世紀中頃に起きたハスィディズム(ユダヤ敬虔主義)理解を中心に、明らかにすることを試みる。(司会:鶴見太郎会員)
17:45-18:00 質疑応答

2019年9月15日日曜日

シンポジウム:生きられた古代宗教 Lived Ancient Religion

国際シンポジウム International Symposium
生きられた古代宗教 Lived Ancient Religion

2019年9月21-22日
東京大学本郷キャンパス法文1号館113番教室
Room 113, Faculty of Laws & Letters Building 1, Hongo Campus, University of Tokyo, 2019.09.21-22

2019.09.21 (Sat) 13:30-17:15
シンポジウム「生きられた古代宗教」
Symposium: Lived Ancient Religion

13:30-13:45
趣旨説明 中西恭子(東京大学)
Introduction: Kyoko Nakanishi (University of Tokyo)

13:30-14:45
イェルク・リュプケ(エアフルト大学)
「生きられた古代宗教」
Jörg Rüpke (Erfurt University)
Lived Ancient Religion

15:00-16:00
イスクラ・ゲンチェーヴァ(レイクランド大学ジャパン)
「果敢なる勇気:イェルク・リュプケ教授と歴史上の宗教との対話」
Iskra Gencheva (Lakeland University Japan)
Daring to Dare: Professor Jörg Rüpke and his Dialogues with the Religions of the Historical Past

16:15-17:15
「生きられた古代宗教」理論へのコメント
土居由美(東京大学)・嶋田英晴(國學院大學)・中西恭子(東京大学)
Short Comments on Lived Ancient Religion Theory
Yumi Doi (University of Tokyo), Hideharu Shimada (Kokugakuin University), Kyoko Nakanishi (University of Tokyo)

2019.09.22 (Sun) 13:30-17:00
イェルク・リュプケ教授講演会「生きられた古代宗教」
Professor Jörg Rüpke: Lectures on Lived Ancient Religion

13:30-13:45
趣旨説明 市川裕(東京大学)
Introduction: Hiroshi Ichikawa (University of Tokyo)

13:45-14:45
講演①「宗教的エージェンシー」
Lecture 1: Religious Agency

15:00-16:00
講演②「歴史的視座から見た古代地中海世界の都市宗教と都市」
Lecture 2: Urban Religion and the City in Historical Perspective

16:15-17:00
総合討論 Discussion

主催:科学研究費研究助成金基盤研究A
「イスラエル国ガリラヤ地方の新出土シナゴーグ資料に基づく一神教の宗教史再構築」(代表者:市川裕)