2019年9月30日月曜日

日本ユダヤ学会第16回学術大会

日本ユダヤ学会
第16回学術大会

日時 10月26日(土) 14:00~18:00
会場 学習院女子大学 2号館222教室 

<学術大会プログラム>
14:00-14:05
学術大会開催のあいさつ (学会理事長:市川裕)

14:05-14:35
①大澤耕史(中京大学)
「古代世界のユダヤ教の境界意識――『異教徒』『背教者』を中心に」
現代世界の「ユダヤ人」を考える際に、国籍や出身地、宗教性の度合いなどで様々な区別がなされることは、もはや周知の事実であろう。しかし古代世界で考えてみると、もちろん資料的制約が大きいという前提はあるものの、「ユダヤ人」というくくりで広大な地域の様々な人々を安易に同一視しているのが実情ではないだろうか。本報告はこの疑問点から出発し、古代世界のユダヤ教文献の中で、何が「ユダヤ人」とそれ以外をわけているのかを単語レベルで分析する。まずは「ユダヤ人」内部の自己認識において、彼らの境界意識の一端の解明を試みるものである。(司会:上村静会員)
14:35-14:50 質疑応答

14:50-15:20
②袁浩春(東京大学大学院)
「モーセをめぐるユダヤの聖書解釈——―出エジプト記2章11、12節を中心に」
今日のユダヤ教は、二重トーラーへの理解と解釈に対するモーセの最高の権威性を認め、「モシェ、ラビヌー(われらの師であるモーセ)」という表現と共に、二重トーラーの最初の教師という位置付けで、ユダヤ教内部に定着させた。しかし、出エジプト記から始まったモーセの生涯、そして彼が引き起こした数々の奇跡など、これらのすべての出来事を法解釈(ハラハー)に帰結することができない。故に、法以外の部分(アガダー)を参照し、「モシェ、ラビヌー」という表現の形成経緯の一面を補いたい。(司会:上村静会員)
15:20-15:35 質疑応答

15:35-16:05
③神田愛子(同志社大学大学院)
「人の創造物語から見たマイモニデスにおける質料と形相の概念」
マイモニデスは『迷える者の手引き』第二部30章において、創世記2章の人間の創造物語に言及し、男と女は同時に創造され、別個であると同時に一体であると主張している。彼は『手引き』第三部8章で、人間の男女の不可分性を質料と形相の不可分性から説明し、『手引き』第一部17章では、プラトン主義者が質料を女性とし、形相を男性と称していると述べている。本発表では、マイモニデスの質料と形相の概念を、『手引き』第二部30章を中心とした、彼の人間創造の理解に基づいて考察する。(司会:市川裕会員)
16:05-16:20 質疑応答

16:20-16:30 休憩

16:30-17:00
④青木良華(東京大学大学院)
「ヴォロジン・イェシヴァ考察――ミトナグディーム揺籃の場」
19世紀初頭に当時のリトアニアの町ヴォロジンに創設されたイェシヴァには、東欧だけでなく欧米各地から数多くの優秀なユダヤ人の若者が集まり、彼らは日々トーラーやタルムードなどの聖典学習に没頭した。本発表では、ミトナグディームと呼ばれるユダヤ教正統派の繁栄の象徴とも言えるこのイェシヴァについて、その背景となる歴史や思想とともに紹介する。どのような歴史的展開を辿ったのか、学生たちがどのような教育を受けていたのかなどについて主に発表する予定である。(司会:鶴見太郎会員)
17:00-17:15 質疑応答

17:15-17:45
⑤平岡光太郎(同志社大学一神教学際研究センター)
「マルティン・ブーバーとゲルショム・ショーレムによる聖性についての論争――ハスィディズム理解を中心に」
本発表では、20世紀の代表的なユダヤ思想家の1人であるマルティン・ブーバー(Martin Buber, 1878-1965)とユダヤ神秘主義研究の大家であるゲルショム・ショーレム(Gershom Scholem, 1897-1982)のあいだに見られる「聖性」に関する立場の違いを、18世紀中頃に起きたハスィディズム(ユダヤ敬虔主義)理解を中心に、明らかにすることを試みる。(司会:鶴見太郎会員)
17:45-18:00 質疑応答