2018年5月23日水曜日

合評会:加藤哲平『ヒエロニュムスの聖書翻訳』・大澤耕史『金の子牛像事件の解釈史』

科学研究費補助金助成研究(基盤A)
「ユダヤ文献」の構成の領域横断的研究

加藤哲平『ヒエロニュムスの聖書翻訳』
+大澤耕史『金の子牛像事件の解釈史』合評会
(*6/12「科研プロジェクトからのコメント」に原稿(PDF)のリンクを貼りました)


「古代ユダヤ/キリスト教の伝承混交」のご案内

 律法の妥当性をめぐって、あるいはイエスの神性をめぐって、原理的な対立を孕む古代のユダヤ教とキリスト教――その指導者たちは、実際に人々を教え導こうとするとき、その対立をどこまで維持しえたでしょうか。
 この度、科研費助成研究「『ユダヤ文献』の構成の領域横断的研究」では、古代ユダヤ/キリスト教の曖昧な境界をつぶさにたどる加藤哲平氏、大澤耕史氏の近刊を取り上げつつ、様々な専門分野から評者を招いて合評会を催し、ヴァラエティに富んだ古代のオリエント世界を捉えなおす機会にしたいと考えています。
 当日は(株)教文館の協力により、関連書籍の展示販売も開催する予定です。参加費は無料、申し込みは不要です。皆様のお越しをお待ちしております。

 日時:2018年6月9日 14:00-18:00
 場所:東京大学本郷キャンパス
    国際学術総合研究棟 1F 文学部3番大教室
    (https://www.u-tokyo.ac.jp/campusmap/cam01_01_07_j.html)
 プログラム:
  第一部:加藤哲平『ヒエロニュムスの聖書翻訳』(教文館2018)
   著者による内容紹介
   コメント:戸田 聡 (北海道大学准教授)
        飯郷 友康 (東京大学非常勤講師)
  第二部:大澤耕史 『金の子牛像事件の解釈史』(教文館2018)
   著者による内容紹介
   コメント:武藤 慎一 (大東文化大学教授)
        阿部 望 (獨協大学非常勤講師)
  第三部:全体討論
   科研プロジェクトからのレスポンス(リンク先はPDF原稿)
   志田 雅宏 (日本学術振興会特別研究員(PD))
   全体討論

  (※各部の間に10分程度の休憩を挟みます。)

【著者略歴】
■加藤哲平:
 1984年生まれ。2013年同志社大学大学院博士後期課程退学。同年よりHebew Union College大学院博士課程。M.Phil. in Jewish Studies (Hebrew Union College,
2017)、神学博士(同志社大学、2017)。エルサレム・ヘブライ大学ロスバーグ国際校客員研究員、Xavier University(Cincinanati, OH)人文科学部非常勤講師を経て、現在、日本学術振興会特別研究員(PD)・同志社大学神学部嘱託講師。
 主要論文に”Jerome's Understanding of Old Testament Quotations in the New Testament," Vigiliae Christianae 67 (2013): 289-315; "Greek or Hebrew? Augustine and Jerome on Biblical Translation," in Studia Patristica 98: St Augustine and His Opponents, ed. Markus Vinzent (Leuven: Peeters, 2017), 109-19. 等。
■大澤耕史
 1984年埼玉県生まれ。2013年京都大学大学院人間・環境学研究科博士後期課程単位取得退学。人間・環境学博士(京都大学、2016)。エルサレム・ヘブライ大学ロスバーグ国際校客員研究員、日本学術振興会特別研究員、同海外特別研究員を経て、現在、中京大学国際教養学部助教。
 主要論文に“The Interpretations of the Golden Calf Story in Exodus 32 and a
New Possibility: A Comparison of Judaism with Syriac Christianity,” Proceedings of the 8th CISMOR Conference of Jewish Studies (2015), 86-94;”Jannes and Jambres: The Role and Meaning of Their Traditions in Judaism,” Frankfurter Judaistische Beitraege, vol. 37 (2012), pp. 55-73等。



2018年5月18日金曜日

講演会「ユダヤ啓蒙思想とメンデルスゾーン」(S・ファイナー、M・ゴットリープ)

「ユダヤ啓蒙思想とメンデルスゾーン」
―シュムエル・ファイナー氏、ミヒァ・ゴットリープ氏講演会 

「ユダヤ啓蒙思想とメンデルスゾーン」をテーマに、シュムエル・ファイナー氏(バルイラン大学教授、エルサレム・レオベック研究所所長)とミヒャ・ゴットリープ氏(ニューヨーク大学准教授)を招いて、下記の講演会を開催します。ファイナー氏はハスカラー研究で世界的に著名な学者であり、ゴットリープ氏はモーゼス・メンデルスゾーンや近代ユダヤ思想に関する中堅世代を代表する研究者です。皆さまのご来場をお待ちしております。

東京講演会 
日時:2018年7月1日(日) 13時30分~16時50分  
会場:東京大学(本郷キャンパス) 文学部3番大教室(国際学術総合研究練)
※赤門の近くの建物になります。

ファイナー氏講演
「ユダヤの伝統への挑戦 -18世紀ヨーロッパにおける楽しみ、文化変容、世俗化」Shmuel Feiner
Challenging Jewish Tradition: Pleasures, Acculturation and Secularization in 18th Century Europe
コメンテーター:向井直己(京都大学)

ゴットリープ氏講演
「モーゼス・メンデルスゾーンの現代性 ―マイノリティにとっての教訓」
Michah Gottlieb
Moses Mendelssohn Today: Lessons for Minorities
コメンテーター:市川裕(東京大学)

司会:後藤正英(佐賀大学) 通訳:ギブソン松井佳子(神田外語大)


京都講演会
日時:2018年7月8日(日) 13時30分~16時50分 
会場:同志社大学(烏丸キャンパス) 志高館1階SK118
※ 今出川キャンパスから今出川通沿いに少し北上したところにあります。

ゴットリープ氏講演
「モーゼス・メンデルスゾーン ―神話、歴史、宗教的寛容を求めるユダヤ教徒の闘い」
Shmuel Feiner
Moses Mendelssohn: The Myth, the History, and the Jewish Battle for Religious Tolerance  
コメンテーター:後藤正英(佐賀大学)

ゴットリープ氏講演
ドイツのユダヤ哲学が辿った二つの道:モーゼス・メンデルスゾーンとフランツ・ローゼンツヴァイク
Michah Gottlieb
Two Paths of German Jewish Philosophy: Moses Mendelssohn and Franz Rosenzweig
コメンテーター:細見和之(京都大学)

司会:小野文生(同志社大学) 通訳:ギブソン松井佳子(神田外語大)


使用言語は英語、講演原稿は日本語訳を配布、質疑応答は通訳が付きます。

主催:科研費・基盤研究(C)「モデレート啓蒙主義の再考―メンデルスゾーンにおける啓蒙と宗教の両立可能性」(代表者:後藤正英)
共催(東京講演会);東京大学人文社会系研究科 市川裕研究室、日本ユダヤ学会
共催(京都講演会):京都ユダヤ思想学会


2018年5月7日月曜日

宗教史学研究所第67回研究会

宗教史学研究所
第67回研究会

日時:2018年6月30日(土) 13:00-18:00
場所:東洋英和女学院大学大学院201教室

12:30 受付開始

13:00-14:30 発表1 細田あや子(新潟大学)
「メソポタミアの儀礼で用いられる小像」
<概要> 文献資料と考古学資料から、前 1 千年紀、新アッシリア時代の王の宮殿や個人住宅の基礎部分に神や動物などの小像が埋められていたことが知られている。それらは建物の入り口や門の下に埋められており、なかには「悪よ、退け」「福よ、来たれ」といった文言が刻まれているものがある。このようなことからこれらの小像は、外部からの悪、疾病、敵などが室内に侵入しないようにする防御の意味や、家内安全を祈願する働きをもっていたと考えられる。これらの小像は、アーシプという職能者により、粘土やタマリスクの木などを用いて作られた。メソポタミアにおいて、アーシプの機能は儀礼の執行や病気治しなどさまざまな分野に及ぶ。そのアーシプの働きの一つとして、本発表では、アミュレット(護符)の制作とそれに関する儀礼を取り上げる。アーシプが制作した像がいかにして、人間から悪や疾患を遠ざけ、家の安泰を導く役目を持っていたか、建築内部と外部との境界をどのように仕切っていたのか、儀礼のコンテクストに着目して考察する。神々や、犬や蛇の動物、あるいは混成動物などの Mischwesen をかたどった小像の種類や分類にも注目する。

14:30-14:40 休憩

14:40-16:10 発表2 宮嶋 俊一(北海道大学)
「現代における物的宗教論をめぐって」
<概要> 宗教の物質性に着目した研究が盛んである。マシュー・エンゲルケはその論考において「あらゆる宗教は物質宗教である。あらゆる宗教は、物質性を伴った媒介(メディア)との関連において理解されなければならない。そこには必然的に、宗教的な事物、行為、言語の考察が含まれるが、それらはあっという間に視界や音声から消え去り、雲散霧消するとしても、やはり物質的であるのだ」と述べている。また、ブリュノ・ラトゥールは、物神崇拝について次のように論じている。近代人は物神崇拝(フェティシズム)を批判してきたが、それは被製作性(人間性、内在性)と聖性(神性、超越性)が矛盾すると考えられてきたからだ。しかし、製作と超越は矛盾しないし、近代人もまた超越的なものを大量に製作しているのだ、と。古典的な宗教現象学もやはり事物の宗教性に着目してきた。物質の持つ宗教性をエリアーデは聖と俗の弁証法という形で説明し、ハイラーは同心円的方法においてそれを宗教の対象世界と呼んだ。本発表ではそうした古典的な宗教現象学の成果と今日の物質宗教論を比較し、その意義や可能性について考察を加えたい。

16:10-16:20 参加者自己紹介

16:20-16:30 休憩

16:30-18:00 発表3 林 淳(愛知学院大学)
「近代仏教史における「媒介者」―仏教的知識人の登場―」
<概要> 21世紀になり、近代仏教の研究が、一つのブームになった。近代仏教をテーマにした書籍や論文が多く出されて、近代仏教にかかわるシンポジウムやパネルが、日本宗教学会などで目立つようになった。本発表は、そうした成果をふまえ、近代仏教を総体的に理解することを試みたい。私は「仏教的知識人」という用語を造語し、近代以前の仏教と近代以後の仏教の相違点を論じたいと考える。それでは、仏教的知識人とは誰か。前近代では、僧侶は、書籍を読み、文字を書くことができる知識人層であった。彼らの知識の源泉は、漢文で書かれた経論や漢籍にあった。近代の仏教的知識人は、浄土真宗の寺院に生まれたり、一度は出家したりしながらも、僧侶の伝統的な生き方を選択せず、西洋の言語や学術を修得し、教育、学術、言論などの分野で活躍した。彼らは、僧侶とは異なる方法で仏教を語ることができた。彼らの特徴は、政治、教育、言論などの諸領域と仏教界との「媒介者」であったところにある。近代仏教史は、こうした媒介的な知識人を必要としていたと見ることはできる。

2018年5月4日金曜日

日本ユダヤ学会公開シンポジウム「古代後期のユダヤ教研究の諸相:3つの視点から」

日本ユダヤ学会公開シンポジウム
「古代後期のユダヤ教研究の諸相:3つの視点から」

日時:2018年5月26日(土)14:00-17:50
会場:学習院女子大学 2号館 237教室

14:00-14:10 開会のあいさつ:市川裕(東京大学教授)

14:10-14:50 上村静(尚絅学院大学教授)
「クムランと死海文書:神殿時代末期のユダヤ社会の同時代史的視点から」
バビロン捕囚を経て神殿再建とモーセ五書の成立があり、ユダヤ教が再確立されたかに見えたが、ヘレニズム時代に入り、ユダヤ教内部は分裂の様相を高めていく。そうした中から生まれてきたのがクムラン共同体であり、彼らの存在を露わにしたのが20世紀最大の考古学的発見と言われる死海文書である。本シンポジウムでは、死海文書の大まかな内容とその古代ユダヤ研究における意義について論ずる。

15:00-15:40 市川裕(東京大学教授)
「神殿とシナゴーグ:ラビ・ユダヤ教への宗教史的視点から」
2016年8月、イスラエル北部ガリラヤ地方の遺跡テル・レヘシュで、日本の発掘隊により発見された西暦1世紀のシナゴーグ遺構の宗教史的意義を考える。エルサレム第二神殿時代末期に、ユダヤ社会が神殿儀礼以外にどのような宗教的要素を備えた文化を形成していたかを明らかにして、神殿崩壊後のラビ・ユダヤ教共同体への展開を宗教史的にたどって、文化の連続性と断続の問題を論じる。

15:50-16:10 休憩

16:10-16:50 中西恭子(東京大学研究員)
「ローマ帝国とユダヤ教:古代ローマ史の視点から」
キリスト教の公認宗教化以後、ローマ帝国の宗教政策は親キリスト教的傾向を深めてゆく。この状況のなかでキリスト教ではない宗教はいかに生き延びたのだろうか。本シンポジウムでは、古代末期のローマ帝国における非キリスト教徒のおかれた状況を紹介し、法典史料にみられる非キリスト教徒対策立法のなかの対ユダヤ人立法の内容とその宗教史的意義について考察する。

16:50-17:50 全体討議