2018年10月22日月曜日

2018年度聖書講座『ユダヤ教とキリスト教』

2018年度 聖書講座
『ユダヤ教とキリスト教』
共催:カトリック東京大司教区 上智大学キリスト教文化研究所

2018年11月17日(土)
場所:上智大学 中央図書館 9階 921会議室
聴講券:一般1000円、学生800円
発売日:2018年10月19日(金)~
発売所:聖イグナチオ教会案内所(月曜休み)または上智大学キリスト教文化研究所(土日祝休み)

10:20-10:30
挨拶
竹内 修一(上智大学教授)

10:30-11:30
「イエスの時代の言語生活—イエスは何語を使ったか—」
高橋 洋成(東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所特任研究員)
(内容)
通説では「イエス・キリストはアラム語を話した」とされますが、はっきりした証拠はありません。新約聖書にわずかに残されているイエスの言葉も、アラム語なのかヘブライ語なのか曖昧なものばかりです。そこで、本講座はイエス時代の言語状況を整理しながら、この問題を考えてみます。まず、当時のパレスチナは西方の国際語であるギリシア語と、東方の国際語であるアラム語の交差する地域でした。また、ヘブライ語も書き言葉としてだけでなく、話し言葉として使われていたことが判明しています。さらに、地域ごとに一つの言語が使われていたというより、複数の言語が場面に応じて「使い分け」されていた形跡があります――このような現象を言語学ではダイグロシア(二言語使い分け)と言います。以上のような状況を踏まえながら、イエスは何語を使ったか、ひいては、聖書記者はどんな言葉を使ったのかを、当時の言語生活に思いを馳せながら概観してみましょう。

13:00-14:00
「中世ユダヤ教世界におけるイエス—聖書解釈と民間伝承—」
志田 雅宏(日本学術振興会特別研究員)
(内容)
中世のユダヤ人たちは、E・ルナンら近代の「史的イエス」の探究とは異なる仕方で「人間イエス」を描いた。それは主にキリスト教との宗教論争のなかで、キリスト教徒、あるいはキリスト教徒聖書を読み、対抗的な言説を創り出すことを目的とするものであった。本発表では、そのユダヤ版イエス描写をふたつの文学ジャンルから取り上げる。ひとつは聖書解釈であり、ヘブライ語聖書/旧約聖書にイエス・キリストの預言を見出すキリスト教神学者に対して、ユダヤ人の聖書注釈家たちがどのような批判的応答をおこなったのかを、中世ユダヤ教の代表的なキリスト教論駁書から検討する。もうひとつは民間伝承であり、新約聖書の福音書におけるイエスの生涯と活動を大胆に読みかえた、『トルドート・イェシュ』というユダヤ版イエス物語を紹介する。これらの事例を通じて、中世ユダヤ教における、キリスト教との論争という文脈での聖書の読みについて考察する。

14:15-15:15
「ホロコースト後のユダヤ人とキリスト教徒」
武井 彩佳(学習院女子大学教授)
(内容)
キリスト教会とナチズムの関係についてはよく知られているだろう。ドイツではヒトラーに迎合する教会体制さえ存在したこと、教皇ピウス12世がユダヤ人虐殺を強く非難しなかったことなどが指摘されてきた。しかし、ホロコーストの後に、一般のキリスト教徒とユダヤ人の間にどのような問題があったのかはあまり知られていない。本講座では、ホロコーストゆえに生じた諸問題を、具体例とともに見てゆく。例えば、迫害を逃れるためにユダヤ教からキリスト教に改宗した者は、戦後どのように扱われたのか。また、カトリック圏でよく見られたケースだが。キリスト教徒の家庭で匿われ、洗礼を受けた子供の返還が裁判で争われている。逆に、キリスト教徒の側からは、ユダヤ人との和解はいかに試みられたのだろうか。ホロコーストにおける加害者は大半がキリスト教徒だったことを思うと、この問題を避けて通ることはできないだろう。

15:45-16:45
シンポジウム
司会:竹内 修一

上智大学キリスト教文化研究所ウェブサイト(トップページ)
http://dept.sophia.ac.jp/is/icc/


これまでの聖書講座
http://dept.sophia.ac.jp/is/icc/lecture2/