2026年6月6日土曜日

日本ユダヤ学会2026年度シンポジウム「中世一神教徒の共生-カイロ・ゲニザから知られる世界」

 日本ユダヤ学会2026年度シンポジウム

「中世一神教徒の共生-カイロ・ゲニザから知られる世界」

日時:2026年7月4日(土)
会場:学習院大学 目白キャンパス 東2号館13階およびオンライン(Teams)

プログラム

14:00 開会の辞 市川裕(本会理事長、東京大学)

14:10-15:00 嶋田英晴(同志社大学)
「カイロ・ゲニザとユダヤ商人の移動性」

19世紀末に旧カイロで発見された「カイロ・ゲニザ」(ゲニザ文書)は、ディアスポラ(離散)のユダヤ史の分野に限っても、見えないその歴史に明確な輪郭を与えた。しかし、ゲニザ文書の有用性はそのことに留まらない。その後もゲニザ文書に基づく歴史研究は今日に至るまで連綿と続けられており、イスラームの社会経済史やグローバルヒストリーに至るまで大きく貢献している。そこで本発表では、ゲニザ文書とは何かについて概観し、それが誰によってどのように研究されてきたかについて簡単に解説する。そのうえで、西はアンダルスから東はインドまでの広い範囲に渡って活動していたユダヤ商人たちの活動地域や移動経路についてゲニザ文書から考察する。最後に、ユダヤ商人たちが、ユダヤを含む少数派に対しても寛容な政策を施行する王朝において活発に活動し、またそうした地域に移住することが持つ意味について改めて考察する。
(報告40分、質疑10分)

15:10-15:50 野口舞子(信州大学)
「ムワッヒド朝におけるユダヤ人政策とカイロ・ゲニザ」

 イスラーム支配下のユダヤ人共同体は、ズィンミー制度のもとで信仰と一定の自治を認められていた。西方イスラーム世界では、後ウマイヤ朝からターイファ期にかけてユダヤ人共同体が発展したとされるが、12世紀にムワッヒド朝(1130-1269年)が成立すると状況は変化し、とりわけその統治下では衰退に向かったと理解されてきた。著名なユダヤ人哲学者マイモニデス(1204年没)がエジプトへ移住したことは、その象徴的事例として知られている。本報告では、まずムワッヒド朝期のズィンミー政策について、アラビア語史料をもとにその実態と研究史を整理する。ついで、カイロ・ゲニザを参照しながら、同時代のユダヤ人共同体がムワッヒド朝支配をどのように経験したのかについて検討する。そのうえで、マグリブとアンダルスの状況を比較しながら、ムワッヒド朝支配下におけるユダヤ人共同体の経験の相違について考察する。
(報告30分、質疑10分)

16:00-16:40 志田雅宏(静岡県立大学)
「アブラハム・マイモニデスにとってのマイモニデス論争—比較による考察―」

マイモニデスの法典『ミシュネー・トーラー』と哲学書『迷える者の導き』は、地域ごとに多様化する中世のユダヤ教文化に大きな衝撃をもたらした。とりわけ南フランスでは、彼の哲学書の受容をめぐって激しい論争が起こり、ユダヤ人共同体の内部で対立が深刻化した。このマイモニデス論争を調停することに従事し、フランス北部のラビたちに対してマイモニデスの哲学の意義を示したのが、カタルーニャの指導者ナフマニデスであった。他方、エジプトでは父の後を継いでユダヤ人共同体の指導者となったアブラハム・マイモニデスがこの論争に応答したが、そこには南フランスとエジプトのユダヤ教文化の違いについての彼の認識が反映されている。本報告では、マイモニデス論争に対するアブラハム・マイモニデスの応答について、ナフマニデスの事例との比較を通じて考察する。また、それによってエジプトのユダヤ教文化を特徴づけているムスリムとの交流についても検討したい。
(報告30分、質疑10分)

16:50-18:00 全体討論

参加方法については学会のウェブサイトで確認してください。
https://jewishstudiesjp.org/2026/06/05/2026symposium/