2023年6月17日土曜日

日本ユダヤ学会2023年度シンポジウム

 日本ユダヤ学会2023年度シンポジウム

「東欧ユダヤ史研究の過去と現在」

日時:2023年7月1日(土)14:00~17:50
会場:Zoomによるオンライン開催

14:00~14:10 開会の挨拶:市川裕(東京大学名誉教授)

14:10~14:50 安齋篤人(東京大学大学院)
「戦間期ガリツィア・ユダヤ人の都市近郊農業とエスニック・マーケティング戦略」

 本報告は,戦間期のガリツィア地方におけるユダヤ人の都市近郊農業を扱う。近代に至るまで、ヨーロッパのユダヤ人は法的差別のために土地の購入を禁じられ、農業から疎外されていた。中東欧地域において例外的にユダヤ人の農業が発展したのが、19世紀後半から20世紀半ばにかけてハプスブルク帝国及びポーランド第二共和国の支配下にあったガリツィアである。同地域では、19世紀中盤の法的解放の後にユダヤ人が土地を購入し、都市近郊農業という新しい農業ビジネスを展開した。特に戦間期にはユダヤ人の食事規定(コシェル)を満たす乳製品が都市部で販売されると共に、パレスチナなど海外市場への輸出も試みられた。本報告ではこうしたユダヤ農業の特徴を、ポーランド第二共和国におけるガリツィアや諸地域の戦災復興と都市化、国際的な資金支援、固有の食習慣を維持する民族的・宗教的マイノリティを対象としたユダヤ人農家のエスニック・マーケティング戦略の3つの観点から分析する。(質疑応答10分)

14:50~15:00 休憩 (10分)

15:00~15:40 西村木綿(名古屋外国語大学)
「誰が、なぜ、『ポーランドのユダヤ史』を書くのか」

歴史的ポーランドのユダヤ人についての近代的な歴史研究は、19世紀末よりポーランドのユダヤ人自身の手で開始された。WWII後、研究の中心はイスラエルと米国に移るが、他方で1980年代以降のポーランドでは、主要大学を拠点に非ユダヤ系ポーランド人によるユダヤ史研究が盛んに行われている。本報告では、それぞれの時期にどのような動機がポーランド・ユダヤ史研究を促したか、また、戦前と戦後で担い手が変わる中で、研究にどのような変化があったのかを考察する。(質疑応答10分)

15:50~16:00 休憩 (10分)

16:00~16:40 重松尚(日本学術振興会)
「リトアニアのユダヤ人に関する歴史叙述の変遷」

リトアニアの歴史を語る上でユダヤ人の存在は欠かすことができない。しかし、従来のリトアニアの歴史叙述においては、民族的リトアニア人を主体とする歴史叙述のなかでユダヤ人についてはほとんど触れられてこなかった。21世紀に入ると、リトアニアが欧州統合を進めていく上で多文化主義が重視されるようになり、これに伴いリトアニア・ユダヤ人の歴史も再認識されるようになってきている。本発表では、リトアニアにおける主要な歴史書においてユダヤ人に関する歴史叙述がどのように変遷してきたのか、その背景となる政治的動向も含めて論じる。(質疑応答10分)

16:50~17:50 全体討議

日本ユダヤ学会ウェブサイト
https://jewishstudiesjp.org/2023/06/06/2023symposium/