2017年10月11日水曜日

日本ユダヤ学会第14回学術大会

日本ユダヤ学会
第14回学術大会

プログラム

日時 10月28日(土) 14:00~17:30
会場 学習院女子大学 2号館237教室

14:00~14:30
藤田教子(東京大学大学院人文社会系欧米系文化研究専攻博士課程)
「フランツ・カフカの〈もう一人のアブラハム〉」

「僕はもう一人のアブラハムを考えることができるように思う」。ジャック・デリダは自らに「ユダヤ人であること」を問う考察をこの一文から始める。それはフランツ・カフカが友人へ送った手紙からの抜粋であった。アブラハムに関する言説は両者を神とのつながりへと導く。しかし両者が念頭に置いているのは神のみではない。両者にとって必然的に現れる「もう一人のアブラハム」とは何か。デリダと比較しつつ、カフカのアブラハムを再考したい。(司会:北彰)

14:30-14:45  質疑応答

14:45~15:15 
牧野素子(桜美林大学、外務省研修所)
「ウンベルト・エーコ『プラハの墓地』にみる問題提起とその背景」

イタリアの記号学者で作家の ウンベルト・エーコは、2010年に第6作目となる小説『プラハの墓地』(2010年)を出版した。その中核にあるのは20世紀最大のユダヤ人虐殺の原因を作ったと云われる偽書『シオン賢者の議定書』(以下『議定書』とする)が成立する過程である。『議定書』に関しては、エーコは第2作目の小説『フーコーの振り子』(1988年)や連載している週刊誌のコラム、ハーヴァード大学での連続講義などでも言及してきた。そこには近現代史に対するエーコの問題提起がある。その問題と、エーコが執拗にこの問題を追い続けてきた背景について明らかにする。(司会:母袋夏生)

15:15-15:30 質疑応答

15:30~15:50 休憩

15:50~16:20 
石黑安里(同志社大学研究開発推進機構及び神学部特別任用助教)
「アメリカにおける改革派ユダヤ教の形成とシオニズムへの接近:カウフマン・コーラーからステファン・S・ワイズまで」

本発表は、アメリカにおける改革派ユダヤ教の形成過程を通して、改革派ユダヤ教がシオニズムへと接近していった背景を考察する。具体的には、カウフマン・コーラー(Kaufmann Kohler, 1843-1926)とステファン・S・ワイズ(Stephen Samuel Wise, 1874-1949)に焦点を当てることで、ユダヤ教改革派の変容を概観し、ユダヤ教改革派によるシオニズム運動への接近が、ユダヤ教のアメリカ化の一つの結果であったことを明らかにする。(司会:武井彩佳)

16:20-16:35  質疑応答

16:35~17:05 
二井彬緒(東京大学大学院総合文化研究科博士課程)
「H・アーレントのバイナショナリズムと〈住まい〉の思想的関係性」

近年、現代思想においてバイナショナリズムが再評価の傾向にある。ここで注目すべきは、近年のバイナショナリズム再評価は必ずハンナ・アーレントの思想がその下敷きとして、言及される点である。本発表では、1940 年代後半のシオニズム批判の論考を中心に、アーレントのバイナショナリズム論によって実現される空間(国家という「住まい」)の思想を体系的に考察する。その上で、彼女のバイナショナリズムが目指した空間はどのように思考されていたか、また、バイナショナリズムが持つ思想的可能性を論じる。(司会:大内宏一)

17:05-17:20 質疑応答

17:50~20:00 懇親会