2017年10月18日水曜日

Adina Hoffman & Peter Cole講演会

科研費助成研究(基盤A)
「『ユダヤ文献』の構成の領域横断的研究」
特別講演会のご案内

 この度、京都大学・勝又研究室で進めている研究プロジェクト「『ユダヤ文献』の構成の領域横断的研究」の一環として、同志社大学のAda Tagger Cohen教授のご協力のもと、詩人・中世ユダヤ詩の英訳者としてご活躍されているPeter Cole氏、エルサレムを主題とした伝記作家として著名な Adina Hoffman氏ご夫妻をお招きし、京都・東京にて連続講演を開催致します。
 京都講演(11/1: 於同志社大学)においては、Cole氏のご専門である中世スペイン・ユダヤ詩という文学ジャンルの誕生について、東京講演(11/3: 於神保町・学士会館)においては、Cole氏、Hoffman氏のお二人に、2012年にアメリカ図書館協会・ユダヤ文学賞を受賞された共著、「Sacred Trash: Lost and Found World of the Cairo Geniza (2011: Schocken/Nextbook)」をベースとしたゲニザ研究史についてお話しいただきます。
 詳細は以下をご覧ください。皆様のお越しをお待ちしております。
(主催:京都大学大学院 人間・環境学研究科 向井 直己)

1.京都講演 (要事前申込)
講師:Peter Cole氏
標題:"The emergence of Hebrew poetry in Medieval Spain"

概要:本講演においては、詩人・翻訳者・学者として著名なPeter Cole博士をお招きし、中世ムスリム・スペインのヘブライ語詩の「黄金期」についてご紹介いただく予定である。10世紀以降、アンダルシアのユダヤ詩人たちは宗教的・世俗的な詩を新しい形式で書き始め、ヘブライ語の長い歴史における最も偉大な詩の幾つかを創出した。この講義においては、この詩の起原と発展について学び、また幾つかの詩を読みながら、この魅力的な分野の紹介としたい。
(※配布資料の準備のため、事前申し込みをお願いいたします)

日時:2017年11月1日 13:10-14:40 (※ヘブライ語の授業内での講演です)
会場:同志社大学 今出川キャンパス 神学館 G31教室
     〒602-8580 京都市上京区今出川通烏丸東入
     ・地下鉄烏丸線:「今出川」駅から徒歩1分
     ・京阪電車 :「出町柳」駅から徒歩15分
     ・バス停 :烏丸今出川」から徒歩1分
MAP:   http://www.doshisha.ac.jp/information/campus/access/imadegawa.html

2.東京講演 (事前申込不要)
講師:Peter Cole氏・Adina Hoffman氏
標題:Sacred Trash: The Lost and Found World of the Cairo Geniza

概要:カイロ・ゲニザは、ユダヤ人の書いたテクストのもっとも貴重な保管庫である――死海文書以上に、とさえ言えるかもしれない――とは、多くの人々が認めるところである。アメリカで数々の賞を受賞した著作家、Peter Cole、Adina Hoffman両氏により、この驚くべきタイム・カプセルの内容をご紹介いただき、同時にその発見の歴史についても学ぶこととしたい。かつて繁栄を誇った、驚くほど多様な中世地中海のユダヤ文化を俯瞰して頂きつつ、どのような文献がそれぞれの文化的な価値観を示しているのか、またその理由についてお話しいただく。
本講演では、ゲニザ一般の解説からはじめ、(通常ゲニザに収められているような)神聖なテクストのみならず、あらゆる種類の書き物が収められているというカイロ・ゲニザに固有の特徴についてお話しいただく予定である。中世地中海社会の交差点に立つエジプトの共同体が、およそ千年にわたって保管してきたゲニザには、聖なるものも俗なるものも、儀礼的なものも、文学的なものも、日常生活に関わるものも含まれている。さらに、ルーマニア出身のカリスマ的ラビ、ソロモン・シェヒターほかによるゲニザ発見の初期をとりまく文化的状況、テクストにまつわる問題を概観して頂いたうえで、個別的な発見と、(しばしば無視されてきた)資料を手にした研究者らの価値づけのあり方に焦点をしぼりこんでいく。
 長年失われてきた黙示的文書(コヘレト書)、儀礼詩(ビザンティン及びパレスティナ)、業務上の、あるいは個人間の文通記録、婚姻支度の目録、諸種の規定等が論点となる。

日時:2017年11月3日(金・祝) 13:30-16:30
会場:学士会館 307号室
    〒101-8459 東京都千代田区神田錦町3-28
    ・都営三田線/都営新宿線/東京メトロ半蔵門線
「神保町」駅下車A9出口から徒歩1分
    ・東京メトロ東西線「竹橋」駅下車3a出口から徒歩5分
    ・JR中央線/総武線「御茶ノ水」駅下車御茶ノ水橋口から徒歩15分
    MAP

MAP:https://www.gakushikaikan.co.jp/access/

【講師紹介】
■Peter Cole氏
 1957年、ニュージャージー州Paterson生まれる。5冊の詩集を刊行するほか、中世から近代にいたるヘブライ語・アラビア語の翻訳を多数手がける。著書に、Hymns & Qualms: New and Selected Poems and Translations, The Dream of the Poem: Hebrew Poetry from Muslim and Christian Spain (950-1492), The Poetry of Kabbalah: Mystical Verse from the Jewish Tradition等。アメリカ人文学アカデミー文学賞、グッゲンハイム記念財団奨励金、Jewish National Book Award、The PEN翻訳賞, アメリカ図書館協会・ユダヤ文学賞(Adina Hoffmanとの共著Sacred Trash: The Lost and Found World of the Cairo Genizaにて)、マッカーサー奨励金等数々の賞を受賞。イェール大学にて、ユダヤ学・現代文学を講じる。エルサレム及びニューヘイヴン在住。「傑出した作家」(The Nation紙評)、「現代のもっとも重要な詩人のひとり」(ハロルド・ブルーム評)。
 ホームページ:www.ibiseditions.com/petercole

■Adina Hoffman氏
 エッセイスト・伝記作家。中東を題材に、独特の視座から当地の土地柄・人々・文化の見過ごされてきた側面に光をあててきた。著書に House of Windows: Portraits from a Jerusalem Neighborhood, My Happiness Bears No Relation to Happiness: A Poet’s Life in the Palestinian Century, Till We Have Built Jerusalem: Architects of a New City等。Peter Coleとの共著、Sacred Trash: The Lost and Found World of the Cairo Genizaにて、アメリカ図書館協会ユダヤ文学賞(ブロディー・メダル)を受賞。Wesleyan大学、Middlebury College、ニューヨーク大学客員教授、イェール大学・ホイットニー人文学センター研究員。イギリス、Jewish Quarterly紙ウィンゲート賞、グッゲンハイム記念財団奨励金を受賞したほか、Windham Campbell文学賞の最初の受賞者のひとりでもある。エルサレム及びニューヘイヴン在住。
 ホームページ:www.ibiseditions.com/adinahoffman

Adina Hoffman & Peter Cole
Sacred Trash: The Lost and Found World of the Cairo Geniza
(New York: Nextbook, Schocken, 2011)




2017年10月11日水曜日

日本オリエント学会公開講演会「唯一神教における法と伝承」

日本オリエント学会
第318回公開講演会

「唯一神教における法と伝承」
2017年10月28日(土)14:00-17:00
東京大学本郷キャンパス法文2号館1番大教室

市川裕(東京大学大学院人文社会系研究科・教授)
「ユダヤ教の法と伝承—タルムードはなにを議論しているのか—」

柳橋博之(東京大学大学院人文社会系研究科・教授)
「イスラーム法とハディース(預言者伝承)」


日本ユダヤ学会第14回学術大会

日本ユダヤ学会
第14回学術大会

プログラム

日時 10月28日(土) 14:00~17:30
会場 学習院女子大学 2号館237教室

14:00~14:30
藤田教子(東京大学大学院人文社会系欧米系文化研究専攻博士課程)
「フランツ・カフカの〈もう一人のアブラハム〉」

「僕はもう一人のアブラハムを考えることができるように思う」。ジャック・デリダは自らに「ユダヤ人であること」を問う考察をこの一文から始める。それはフランツ・カフカが友人へ送った手紙からの抜粋であった。アブラハムに関する言説は両者を神とのつながりへと導く。しかし両者が念頭に置いているのは神のみではない。両者にとって必然的に現れる「もう一人のアブラハム」とは何か。デリダと比較しつつ、カフカのアブラハムを再考したい。(司会:北彰)

14:30-14:45  質疑応答

14:45~15:15 
牧野素子(桜美林大学、外務省研修所)
「ウンベルト・エーコ『プラハの墓地』にみる問題提起とその背景」

イタリアの記号学者で作家の ウンベルト・エーコは、2010年に第6作目となる小説『プラハの墓地』(2010年)を出版した。その中核にあるのは20世紀最大のユダヤ人虐殺の原因を作ったと云われる偽書『シオン賢者の議定書』(以下『議定書』とする)が成立する過程である。『議定書』に関しては、エーコは第2作目の小説『フーコーの振り子』(1988年)や連載している週刊誌のコラム、ハーヴァード大学での連続講義などでも言及してきた。そこには近現代史に対するエーコの問題提起がある。その問題と、エーコが執拗にこの問題を追い続けてきた背景について明らかにする。(司会:母袋夏生)

15:15-15:30 質疑応答

15:30~15:50 休憩

15:50~16:20 
石黑安里(同志社大学研究開発推進機構及び神学部特別任用助教)
「アメリカにおける改革派ユダヤ教の形成とシオニズムへの接近:カウフマン・コーラーからステファン・S・ワイズまで」

本発表は、アメリカにおける改革派ユダヤ教の形成過程を通して、改革派ユダヤ教がシオニズムへと接近していった背景を考察する。具体的には、カウフマン・コーラー(Kaufmann Kohler, 1843-1926)とステファン・S・ワイズ(Stephen Samuel Wise, 1874-1949)に焦点を当てることで、ユダヤ教改革派の変容を概観し、ユダヤ教改革派によるシオニズム運動への接近が、ユダヤ教のアメリカ化の一つの結果であったことを明らかにする。(司会:武井彩佳)

16:20-16:35  質疑応答

16:35~17:05 
二井彬緒(東京大学大学院総合文化研究科博士課程)
「H・アーレントのバイナショナリズムと〈住まい〉の思想的関係性」

近年、現代思想においてバイナショナリズムが再評価の傾向にある。ここで注目すべきは、近年のバイナショナリズム再評価は必ずハンナ・アーレントの思想がその下敷きとして、言及される点である。本発表では、1940 年代後半のシオニズム批判の論考を中心に、アーレントのバイナショナリズム論によって実現される空間(国家という「住まい」)の思想を体系的に考察する。その上で、彼女のバイナショナリズムが目指した空間はどのように思考されていたか、また、バイナショナリズムが持つ思想的可能性を論じる。(司会:大内宏一)

17:05-17:20 質疑応答

17:50~20:00 懇親会