2016年9月29日木曜日

日本ユダヤ学会第13回学術大会

日本ユダヤ学会 第13回学術大会

2016年10月29日(土) 13:30−17:30
学習院女子大学 2号館 237教室
 (注意)入構の際には、正門(明治通り)もしくは北門(諏訪通り)の受付で氏名を書き、必ず入構証をもらってください。

13:30~14:00 阿部望(獨協大学)
「死海文書(4QMMTとダマスコ文書)の律法解釈観点からの再考」
ユダヤ教各宗派の思想特徴と宗派分裂の原因は律法解釈の相違にある。そこで死海文書に関しても、ユダヤ教各宗派との律法解釈比較が活発になされるべきであるが、『ミシュナー』や『トセフタ』などのユダヤ教古典の編集年代が紀元3世紀であるため、紀元前に書かれた死海文書との比較がなおざりにされてきた。本発表では、ユダヤ教古典と死海文書内の律法解釈の重複点と相違点を整理して、新たな研究方法を提示する。(司会:市川裕)
14:00-14:15  質疑応答

14:15~14:45 神田愛子(同志社大学大学院)
「マイモニデスにおける法の意義と目的――『迷える者の手引き』III:27を中心にして」
マイモニデスは『迷える者の手引き』第三部27章において、法は人間の魂と身体の福利を目的としており、すなわち、神に関する正しい見解を得、悪行を正し、社会的に有益な行いに繋げることが法全体の目的であると論じている。マイモニデスの思想を理解するためには、彼の法に対する基本的な見解について理解する必要がある。本発表では、学知と実践を繋ぐ前提としての、マイモニデスにおける法の意義と目的について考察する。(司会:市川裕)
14:45-15:00 質疑応答


15:00~15:30 青木良華(東京大学大学院)
「イスラエル・サランターとその思想的背景と系譜」
19世紀東欧のユダヤ教正統派の中で起った「倫理復興運動」=ムーサル運動の創始者とされるイスラエル・サランター(1810-83)の紹介を行う。サランターは当時ユダヤ人同胞の間に起った道徳的な堕落や、トーラーの知識と信仰の間に生じた溝を問題視した。そして「神への畏れ」や「来る世の罰」といったユダヤ教の倫理的な要素を重視し 、そうしたテーマを扱った文献(=ムーサル文学)の学習を推奨した。今回の発表では、サランターの基本的な考え方や活動について、当時の東欧ユダヤ人が置かれた歴史的・社会的状況等をふまえて考察する。(司会:高尾千津子)
15:30-15:45 質疑応答

15:45~16:00 休憩

16:00~16:30 三代真理子(東京藝術大学)
「現代におけるクレズマー音楽の伝承」
十六世紀頃から中東欧ユダヤ人社会で活動した楽師クレズメルの音楽伝統は二十世紀半ばに断絶したが、1970年代末からのリバイバル現象によってクレズマー音楽としてよみがえった。本発表はリバイバリストたちを含む現代クレズマー音楽家たちが二十世紀前半の録音や楽譜資料をいかに用い、理解し、演奏に反映しているのかという観点から、クレズマー音楽の伝承について述べる。考察は音楽家たちの考え方とレパートリー、演奏様式について行う。(司会:黒田晴之)
16:30-16:45 質疑応答
16:45~17:15 川端美都子(香川大学)
 「ブエノス・アイレス市における若者ユダヤ・アイデンティティの『パッケージ化』と多様化する『クレズマー音楽』
ブエノス・アイレス市でハイブリッド化したクレズマー音楽を演奏する若者ユダヤ・ミュージシャンの活動に焦点を当て、「若者ユダヤ」というアイデンティティが「パッケージ化」される過程を考察する。同所におけるフィールドワークと、ユダヤ団体の文化プログラム長、市政府の文化担当者、若者ミュージシャンたちへのインタビューに基づき、それぞれのセクターが、若者ユダヤ・アイデンティティやクレズマー音楽という「協働・投資」に見出す文化・社会・経済的価値について明らかにしたい。(司会:黒田晴之)
17:15-17:30 質疑応答


2016年9月17日土曜日

ヨナタン・メイール教授講演会

ヨナタン・メイールJonatan Meir教授講演会

ユダヤ教における聖人伝と大衆神秘主義運動の興隆について
(Hagiography and the Rise of Jewish Popular Mystical Movements)

日時:2016年10月6日(木) 15:00-17:30
場所:東京大学本郷キャンパス法文一号館219教室
(講演は英語で行われます。)

内容:本講演では、18、19世紀に復興を遂げた近代ユダヤ教の聖人伝文学を批判的に分析する。敬虔主義、神秘主義運動であるハシディズムによって引き起こされた社会変化と教義の変化の文脈の中に、これらの文学を位置づけることが目的である。
ハシディズム研究の多くは、その歴史、および教義の側面に焦点を当てている。これらの点は、ハシディズムの中心であるツァディーク(義なる人、あるいは聖人の意。ハシディズムにおける宗教的指導者の呼称。)の運動と発展を形作ってきた要素として重要である。一方で、同様に彼らの運動を促進してきた文学の分野については、ほとんど注目されていない。

今回、聖人伝文学を新たな観点から見直すことによって、宗教指導者の新たなモデルをいかに作ってきたか、近代に向けて独自の保守的路線をいかに提示してきたかを明らかにする。

講演者紹介:ヨナタン・メイール Jonatan Meir
ベングリオン大学(ネゲブ)教授。近代ユダヤ思想を専門とし、東欧ユダヤ史、ユダヤ神秘主義、ユダヤ啓蒙主義、現代カバラーなど幅広い研究を行う。最近の著書に、『想像のハシディズム:ヨセフ・パールによる反ハシディズム文学』(2013)、『文学におけるハシディズム:ミハエル・レヴィ・ロドキンソンの生涯と作品』(2016)、『エルサレムのカバリスト団体:1896-1948』(2016)などがある。

2016年9月2日金曜日

セミナー「ユダヤ聖人伝入門」

セミナー「ユダヤ聖人伝入門」
講師:Jonatan Meir 教授(Ben Gurion University of the Negev, Israel)

ユダヤ教の厳格な一神教としての一側面を強調しがちな研究の伝統のなかでは、キリスト教の聖人信仰に比するべきユダヤ教の興味深い側面は、これまでさほど顧みられてきませんでした。中世以降、主として民衆の間に広まった「聖人」のモティーフは、後にハシディズムが「ツァディク」という独特の形象を形作る下地となっていきます。これらの「聖人」伝承に関わる主要文献を読み解いていくことで、ユダヤ教・ユダヤ文化を従来とは異なった視点から理解する手掛かりにしたいと考えています。

部分参加も歓迎いたします。皆様のお越しをお待ちしております。
主催:京都大学 人間・環境学研究科 特定研究員 向井 直己

■日時:2016年9月28日~9月30日
   10:00~16:30 (途中、昼食を含めて2回ほど休憩を挟みます)

■場所:京都大学 吉田南キャンパス 吉田南2号館 403号室

■講師:Jonatan Meir 教授(Ben Gurion University of the Negev, Israel)

■使用言語:ヘブライ語(※部分的にイディッシュ語テクストを取り扱います)

■参加費:無料

■主要講読テクスト
9/28:Ma'assebuch, Stories 158-179
9/29:Shivhei ha-Ari' printed edition
9/30:Shivhei ha-Besht, First edition