2021年6月17日木曜日

日本ユダヤ学会公開シンポジウム「コロナ禍のユダヤ人社会」

日本ユダヤ学会公開シンポジウム

「コロナ禍のユダヤ人社会」

日時:2021年7月4日(日)14:00-17:30

開催方法:オンライン(zoom)

14:00-14:10 開会の辞(市川会長)

14:10-14:55 アダ・タガー・コヘン(同志社大学)

“Judaism in time of COVID-19: why couldn’t Ultra-orthodox Jews comply with the pandemic restrictions?”「コロナ禍のユダヤ教:超正統派ユダヤ人はなぜ感染防止対策に従うことが出来なかったのか」

本報告では、ユダヤ教における超正統派(Ultra-Orthodoxy)の創出の歴史を簡潔に描写し、近代化された世界とこの共同体がどのように邂逅したのかについて、その主要な論点を説明する。その邂逅は、彼らがひとつの世界観を構築する要因となった。その世界観とは、ホロコースト以後、ヨーロッパの失われたユダヤ人共同体を再建すべく、宗教的な献身とたくさんの子どもを産むことを奨励したラビたちによって指導された閉鎖的な共同体をその中心とするものであった。また、報告の後半では、昨年から今年の前半にかけて、イスラエルのユダヤ教超正統派の共同体がパンデミックに対してどのように反応したのかを見てゆく。*本報告のみ英語にておこなわれる(日本語訳原稿付き)(質疑応答15分)


14:55-15:40 天野優(日本学術振興会特別研究員PD)

「パシュケヴィル(張り紙)から垣間見る超正統派社会とパンデミック」

本報告では、パンデミックが収束に向かいつつあるエルサレムの様子を伝えるとともに、携帯電話やパソコンといった現代技術を忌避する超正統派社会の情報伝達媒体として、未だ重要な役割を果たしているパシュケヴィル(張り紙)を取り上げる。超正統派が多く暮らす地区で2021年2月以降に収集したパシュケヴィルを例に、パンデミックとその影響がどのように言及されているのかを提示したい。(質疑応答15分)

休憩10分 (15:40–15:50)


15:50-16:35 志田雅宏(東京大学)

「コロナ禍での宗教生活:オンライン・レスポンサを中心に」

ユダヤ教世界では、規範(ハラハー)にもとづいた生活を実践するための制度としてレスポンサ(回答書簡)がある。信仰者のさまざまな質問にラビたちが法的見解を示すことで生活を指導するレスポンサは中世以来の伝統的な制度であり、コロナ禍においてもオンライン・レスポンサとして重要な役割をはたしている。本報告ではいくつかの重要な主題についてのレスポンサを紹介し、現在のユダヤ教世界における宗教生活上の問題意識の所在や、「災い」や「生命」に対するとらえ方などを明らかにしていきたい。(質疑応答15分)


16:35–17:30 全体討論

*当シンポジウムは無料です。

*非会員の方は事前申し込みが必要です。申込方法については日本ユダヤ学会ホームページにてご確認ください。

https://jewishstudiesjp.org/2021/06/16/20210704symposium/

2021年6月12日土曜日

神戸・ユダヤ文化研究会2021年第1回文化講座:市川裕「東欧ユダヤ七賢人とショアー後のユダヤ教再建」

 神戸・ユダヤ文化研究会2021年第1回文化講座

市川裕「東欧ユダヤ七賢人とショアー後のユダヤ教再建」

日時:2021年6月26日(土)

14:00~15:30 講演
15:30~15:40 休憩
15:40~16:40 質疑応答
17:00~18:30 オンライン懇親会

開催方法:オンライン
事前申し込み方法については研究会HPを参照のこと
http://jjsk.jp/event/2021/06/07/941/

講演:「東欧ユダヤ七賢人とショアー後のユダヤ教再建」

講師:市川裕(東京大学名誉教授)

講演要旨:

近代に入ってからユダヤ人とユダヤ教は大きな変化をこうむったが、とりわけ、ショアーはユダヤ教の存続が危惧される悲惨な大事件だった。その最大の被害者であった東欧ユダヤ人の中で、ショアーを生き延びたユダヤ知識人、とりわけユダヤ教正統派の衣鉢を継ぐ人々がどのような戦後を生き、ユダヤ教を再建しようとしたか。その足跡を、リトアニアのユダヤ3博士とタルムード4天王と名付けて、業績を紹介するとともに、ユダヤ教の歴史を貫く特徴を考えてみたい。

講師略歴:

1953年生まれ。東京大学法学部卒、大学院人文科学研究科の博士課程を満期退学。1982~85年にヘブライ大学でタルムードの読み方を学び、モロッコ系シナゴーグの礼拝に親しんで帰国。筑波大技官、講師を経て、東京大学教授を2019年に定年退職。著書に『復刻増補版 ユダヤ教の精神構造』東大出版会2020、『ユダヤ人とユダヤ教』岩波新書2019など。 

2021年6月2日水曜日

京都ユダヤ思想学会2021年度公開シンポジウム「誰が「ユダヤ人」とされてきたか ―自意識と他者のまなざしから―」

 京都ユダヤ思想学会2021年度公開シンポジウム

「誰が「ユダヤ人」とされてきたか ―自意識と他者のまなざしから―」

日時:2021年6月19日(土)13:00-17:00
zoomによるオンライン開催(無料・要事前予約)

大澤 耕史《シンポジウム企画担当/司会》

本学会は名称に「ユダヤ」を掲げ、思想のみならず様々な「ユダヤ的」なものを対象とした研究を推進してきました。しかしこれまでに、学会として正面から「ユダヤ」とは何かという問いを発したことはなかったように思います。もちろん、このある意味で大きすぎる問いに対しては、古来より様々な立場や角度から無数の答えが出されてきました。それらを簡単にさらうだけでも大変な作業であり、半日のシンポジウムで終わるほどの量でもありません。そこで本シンポジウムでは、それ以降の時代の議論の立脚点になるような、古代世界に焦点を絞り分析を進めていこうと思います。その中でも「ユダヤ人」自身の定義や意識のみならず、他者から見た自分たちと「ユダヤ人」との境界およびその周縁部にも着目し、導入的な発表に続いて津田謙治氏、櫻井丈氏、山城貢司氏にそれぞれのご専門の見地からご発表をいただきます。

スケジュール

13:00-13:30
趣旨説明と議論の導入「ヘブライ語聖書~第二神殿時代における「ユダヤ人」」
大澤 耕史(中京大学教養教育研究院助教)

本シンポジウムの導入として、ヘブライ語聖書から第二神殿時代までの「ユダヤ人」描写を抽出して分析を行う。現在のような、居住地に因らない集団を指す「ユダヤ人(יהודי)」という名称が比較的新しいもので、ヘブライ語聖書の時代から広く用いられていたわけではないという点はそれなりに知られていると思われる。そこで本報告ではまず、ヘブライ語聖書から「ユダヤ人」のみならず「ヘブライ人(עברי)」や「イスラエル(ישראל)」といった名称を抽出し、それらの意味の違いやそれぞれの使用法などを考察する。続いて、聖書の外典偽典や第二神殿時代のユダヤ人著作家たちの作品内で「ユダヤ人」がどう定義・表記されているかを概観し、ヘブライ語聖書における用法との違いや変遷を分析する。それらの作業によって、現代のユダヤ人について考える際にも参考となるような、「ユダヤ人」理解のための土台を築きたい。

13:30-14:10
発題①「二、三世紀の教父文献に見られる「ユダヤ人」像:同一の神と相違する信仰」
津田 謙治(京都大学大学院文学研究科准教授)

この発表では、ユスティノス『ユダヤ人トリュフォンとの対話』やテルトゥリアヌス『ユダヤ人反駁』などを含む、二世紀半ばから三世紀前半にかけて著された複数の教父文献における、聖書、律法、そして救済者などに関わる議論を手掛かりとして、教父たちの描き出す「ユダヤ人」像を分析する。正典化された文書を未だもたないキリスト教徒が、独自の信仰と教理を確立しようと模索するにあたって、近接領域において共同体をもつ「ユダヤ人」とどのように対峙し、彼らとの相違点をどのように明確化しようと試みたかに焦点を当てたい。

14:10-14:50
発題② 「「新生児」としての改宗者:バビロニア・タルムードにみる民族的出自擬制としてのラビ・ユダヤ教改宗法規再考」
櫻井 丈(帝京科学大学教育人間科学部講師)

本発表では、第一に、バビロニア・タルムードにおいて体系化された「改宗者は新生児として見なされる」(גר שנתגייר כקטן שנולד דמי)という法概念についての考察に焦点を当て、ラビ・ユダヤ教における改宗法規(גיור)とは「異邦人」の民族的出自を「ユダヤ人」のそれへと擬制する法的装置であることを実証する。第二に、同タルムードにおける改宗に関わる法的議論から、ラビ・ユダヤ教が想起するユダヤ民族のアイデンティティの構造とその特徴を露わにすることによって、同民族共同体の民族性を規定する境界線は歴史的、社会的情勢の変化の要請によって常に変化し、又再構築されることを明らかにする。こうした一連の考察から古代後期におけるラビ・ユダヤ教の規定するユダヤ民族性とは流動的且つ可変的な文化的構築物であることを提起したい。

14:50-15:30
発題③「諸種属・異邦人・セクト主義者:古代ユダヤ教におけるminim概念の再考に向けて」
山城 貢司(東京大学先端科学技術研究センター特任研究員)

セクト主義者を意味する一連のヘブライ語語彙の中でも、minimは一種独特の響きを帯びている。ヘブライ語聖書中の使用例からも明らかなように、minの原義は「種・属」であり、したがって同語の複数形であるminimをあえて直訳すると「諸種属」となるだろう。では、セクト主義者を指示する隠語としてのminimの用法は一体いつどのようにして始まったのか?その淵源は何か?そしてそれはいかなる歴史的=神学的背景を前提としているのか?本発表は、minimの意味論的分析を通じて、これらの問いに答えようとする試みである。

15:30-15:40
休憩

15:40-17:00
質疑応答

■大会参加にあたって
オンライン開催(zoom)のため、事前申し込みが必要となります。
詳細は京都ユダヤ思想学会のウェブサイトにてご確認ください。
https://sites.google.com/site/kyotojewish/